mzsrz(ミズシラズ)、他ジャンルのクリエイター巻き込む求心力 檀上大空やケチャップら二次創作から広がる輪
大原きらりは、もともとは声優志望で声優コンテストの受賞経験もあるメンバー。アニソン/キャラソンにも映えそうな明るく真っすぐな歌声が印象的で、「夜明け」でも心地いい声の伸びが耳に残る。作山由衣は、オーディション開始時はまだ13歳だったグループ最年少メンバー。とはいえ、表現に年齢は関係ないと思わせてくれるような、非常に高い歌唱力と堂々としたパフォーマンスの持ち主だ。
一方で、曲の歌い出しも担当している実果は、オーディション選考中は「家族にうるさくならないよう自室のクローゼットの中で歌っていた」という経験から「クローゼットの住人S」という名前で参加していたメンバー。声の震えや息遣いまで含めて歌の主人公に憑依していくような、曲の感情を伝える能力が非常に高い印象だ。ゆゆんは、5人の中でもパワフルな歌声や表現力が魅力的なメンバーで、「夜明け」でも1番のサビに向かう直前などを見事に歌い切って楽曲内の感情の盛り上がりを表現している。よせいは18歳の最年長メンバー。中国語も堪能なバイリンガルで、オーディションではギターの弾き語りも披露していた。歌声は、柔らかでありつつもどこか芯のある雰囲気で、Cメロの引き込むような歌声なども含めて、緩急のついたテクニックが素晴らしい。
こうした5人の声がひとつになることで、グループとしての表現の幅が広く用意されていることが、mzsrzの最大の魅力。メンバーはすでにそれぞれ高いスキルを持ちながら、まだ10代ということもあって、これからの可能性も無限に開けている。活動を続ける中で、メンバーがよりお互いを理解していくこともさらなるグループの魅力に繋がっていきそうだ。
また、今月21日にはDECO*27が作詞作曲、トラックメイカーのTeddyLoidが編曲を担当した第2弾シングル「ノイズキャンセリング」がリリースされる。この楽曲は、フロアに映えるクラブ・ミュージックをつくることに定評があるTeddyLoidらしいアレンジが加わった、ラテンの要素を取り入れたEDM風のポップ・ミュージック。楽曲のテーマは「SNS」になっており、日々様々な言葉/情報にさらされる中を生き抜く現代の若者の姿が、ワイヤレスイヤホンなどの普及でますます身近になった「ノイズキャンセリング」機能を連想させる形で表現されている。
デビュー曲「夜明け」以上に、五線譜を細かく上下する5人のテクニカルなボーカルが印象的な楽曲だ。また、「夜明け」同様、メンバー全員の声が等しく存在感を放っていて、ひとりが主役になるのではなく、全員がそれぞれに主役であるような、10代の気持ちが歌われた群像劇のような雰囲気が生まれているのも特徴だろう。ラスサビに入る瞬間の心の叫びを表現するようなロングトーンもエモーショナルな楽曲の魅力を倍増させている。
本日4月14日よりInstagramとTikTokにて音源先行配信が行われている。今回は本楽曲を使ったどのような動画企画が行われるのか、期待が高まる。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。