アイナ・ジ・エンドを救ったBUMP OF CHICKENの言葉 岡村靖幸、ジェシー・J……ルーツにある音楽を語る
私のそばにいてくれる人のために「売れたい」
ーーソロデビューしてからのアイナさんは、優秀なスタッフに恵まれていて、それに対して“お膳立て”してもらっているという見方をされることもあるかもしれないですけど、こうしてお話を聞いていて、ずっとダンスだけが自分の居場所だったということも含めて、これまでの人生がようやくここで自分自身の表現として結実したということがわかってきました。
アイナ:でも、バンドのメンバーにも、本当にみんな仕事って部分を超えたところで助けられてばっかりで。まだ、自分が何かをみんなに返すことができてないんで。もしまたツアーをすることができたら、今度は自分もみんなをちょっとだけでも支えることができたらって思ってます。最初は、BiSHでは目標を立てて活動をしてきましたけど、ソロでは別に売れなくもいいと思っていたんですよ。でも、こうしてアルバムを出して、EPを出して、ツアーを回って、みんな仕事じゃないみたいに私に接してくれたり、私が泣いてたらダンサーがずっとそばにいてくれたりして。私に対してみんなこんなに優しく接してくれてるのに、私が「売れなくていい」みたいな気持ちでいたらきっと離れていくだろうしって。
ーーみんながみんな、そんなことはないでしょうけど。
アイナ:だから今は、自分のためじゃなくて、私のそばにいてくれる人がいるんだったら、その人たちのために「売れたい」と思うようになりました。また一人になるんだったら、別にいいやとは思うんですけど。
ーーソロでデビューして、やってる音楽もパフォーマンスも、言ってみれば“アーティスト”としかいいようがないような領域の表現をしているわけじゃないですか。でも、BiSHのことをアイドルグループだと思ってる人もいて、その出自に偏見を持つ人もいると思うんですけど、それについてはどう思ってるんですか?
アイナ:これは正直な気持ちなんですけど、本当に自分のことをアイドルと思ったことがないんですよ。「アイドルやってるな」と思うのは、ステージで自己紹介のキャッチフレーズを言ってる時と、特典会でチェキを撮ってる時、その2コだけで。アイドルって、学生時代にクラスのかわいい子だった子がなるものだと思うから、私は、そういう存在だったことが本当に一度もなかったから。だから、「アイドルだよね?」って言われることは、私にとってはむしろ嬉しいことなんですよ。しかも、後輩もいっぱいできて、ありがたいことだなって。まあ、BiSHの時は、こういう本音はあまり言えないんですけど(笑)。
ーー先日のソロツアーを見ていて印象に残ったのは、アイナさんがお客さんのことを「みんな」じゃなくて、「あなたたち」って呼んでいたことで。
アイナ:「ファンのみんな!」とか言うのって、ちょっとキモいじゃないないですか? 「どこから目線?」って感じで、自分に対してつっこみたくなる(笑)。「みんな、元気?」とか、屈託なく言ってみたい気持ちはあるんですけど、私がお客さんだったら、「ああ、自分はみんなの中の一人か」ってちょっと寂しく思うんじゃないかなって。私がお客さんだったら「あなた」が一番嬉しいから。
ーー英語にすると、「あなた」も「あなたたち」も同じ「YOU」ですしね。
アイナ:ああ、なるほど。そういうお客さんとの一対一の関係というのは、これからも変わらない、変えたくないと思ってます。
ーー歌うことは好きなんですよね?
アイナ:歌は、あまり好きじゃないんです。踊りの方が好き。踊りだと、呼吸するみたいな感じで踊れるから。歌は、まだそんな感じでは歌えないので。
ーーでも、歌も踊りも身体表現であることは変わりませんよね。
アイナ:そうですね。自分にとって歌は、踊りの延長線上にある感じ。こうして喋ってる時も、いつも踊りのことは頭にあって。表情を作ったりするのも、自分にとっては踊りなんですよ。そういう意味では、まだ歌うことが得意だとは思えないんでしょうね。踊りよりも歌が好きになるくらい、歌が上手くなれたらなって今は思ってます。
■リリース情報
アイナ・ジ・エンド / 1st EP『内緒』
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