Sexy Zone、進化はこうして始まったーー海外ポップス×J-POPの実験重ねた音楽変遷

一つの到達点に達しているからこそ踏み出した、新たなる場所

 「RIGHT NEXT TO YOU」はそのようなこれまでの取り組みが結実した結果でもあると言えるだろう。音楽ファンを中心に話題となったUKガラージ+ディープハウスという離れ業のトラックは、サビのメロディやメンバーの個性を最大限に引き出すためのJ-POP的アレンジが極まった結果であり、単に海外のトレンドを模倣するだけでは決して生まれることのない楽曲である。まさにファンとの間で続けてきたカップリングでの経験をリード曲に反映し、完成度の高い作品を提示して多くの人々を驚かせるという、美しい循環が生まれているのだ。

Sexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」(YouTube ver.)

 このような野心的な試みの背景には、ある意味では彼らがすでにJ-POPという枠組みにおいて一つの到達点に達しているからであると言えるかもしれない。レーベル移籍前の最後の作品となるアルバム『POP × STEP!?』は、これまでジャニーズの歴代の名曲群を手掛けてきたスティーブン・リーやCHOKKAKUといった専業作家からtofubeatsやLUCKY TAPESといった日本のポップシーンを支えるミュージシャンが集結し、多種多様なJ-POPを見事に表現してみせた傑作である。そして、ここからさらに高みを目指すため、必然的に視野が海外へと向かっていったと考えても決して不思議ではないだろう。

 そして、この新たなる旅路の現在地を示すのがニューシングル『LET’S MUSIC』だ。今作に収録された新たな全英語詞楽曲となるカップリング曲「Fever」では、現在進行系で海外のメインストリームを席巻しているカリ・ウチスやバッド・バニーといったアクトを彷彿とさせるラテンポップを大胆に取り入れている。特徴的なギターのカッティングの音色と独特なリズムが織りなすトラックにメンバーの艶やかなコーラスの歌声が絡むイントロの時点ですっかり魅了されてしまう本楽曲だが、聴けば聴くほどに、多様な声色とリズムを使い分けながら相手に魅了されていく様を見事に歌い上げるメンバーの表現力の素晴らしさを改めて実感することが出来る。こういった新たな側面を知ることが出来るのもこの取り組みの醍醐味と言えるだろう。

 一方で、表題曲となる「LET’S MUSIC」はまさに王道ど真ん中とも言える、ブルーノ・マーズの名曲「Uptown Funk」を彷彿とさせるソウルファンクナンバーだ。こういった楽曲は一見するとシンプルなようで、実は「本気でポジティブなヴァイブスを放つことが出来なければ成立しない」という難しさを持っている。だが、メンバー同士の掛け合いが印象的なAメロに、陽性のエネルギーが爆発するようなサビ、そして聴き手をパーティに誘うサビ後のコーラスなど、楽曲全編に渡ってメンバーが放つポジティブな雰囲気とリズムを見事に乗りこなす表現力が、本楽曲を完璧に成立させている。このリズムとコーラスに対する見事なアプローチは、(勿論以前から備わっていたものではあるが、)やはりレーベル移籍を経て、より多様な楽曲に挑んできた成長の結果であるとも言えるのではないだろうか。

Sexy Zone「LET’S MUSIC」(YouTube ver.)

 同楽曲のBメロでは、メンバーが4人揃ってJ-POP、ジャズ、R&B、ヒップホップ、ハウス、ロックンロール、ダブステップ、トラップ、ラブバラードと多様な音楽ジャンルの名前を楽しそうに挙げながらサビのパーティへと突入するパートが存在する。今のSexy Zoneはまさにこれらの多種多様な音楽を自由自在に乗りこなしながら、徹底的に世界中のファンを楽しませようとしているのだ。「LET’S MUSIC」というド直球のタイトルは、決して単なる安易な言葉選びではなく、今こそ本気で「音楽」をやってやろうという改めての所信表明であるとも言えるだろう。

  今から約10年前、東京・帝国劇場で行われた記者会見にて、今では故人となったジャニー喜多川氏は、この場でデビューを迎えた彼らについて次のように語った。

 「世界でパフォーマンスを披露できないと。最後はそこ」(※1)

 今やJ-POPを代表する存在となったSexy Zoneは、遂にその約束の場所へと向かおうとしているのかもしれない。

<参照>
(※1)https://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20110930-842678.html

■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。 シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
Twitter : @neu_mura

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