ロザリーナがしたためた“今しか書けないこと” この時代におけるSSWのメリットとは

ロザリーナが“今しか書けないこと”

曲を書く上で嘘を書きたくない

ーーまた「Crazy life」では、先ほどアルバムジャケットのところで話していたような内容が、ストレートに描かれました。

ロザリーナ:こんなに書いちゃって大丈夫なのかなっていうくらい、ストレートに書いてしまった気がします。でもこれは最近作ったというよりは、少し前から書いていた曲で。さっき話したような、実際に好きなことを仕事としてやってみたときに、思ったことというか。

ーー歌詞にある〈でも必要とされていないと僕は怖くて仕方ないんだ〉というのは、胸に迫るところですよね。夢見ていたことと、現実との間でうまくいかないもどかしさもある。いろんなものをすり減らしながらでも、必要とされていたいんだっていう。

ロザリーナ:私、そういう人間なんですよね(笑)。例えば、ひとり旅に行ったり、ひとりで遊びに行くことを心から楽しもうと思う人もいると思うんです。でも私はひとりで行くと全然楽しめなくて。映画でもなんでも、ひとりじゃ行けないんです。一緒にいる誰かが楽しそうにしていたということが、そこでの楽しい思い出になるから。ひとりで生きていけないんですよね。

ーーそういうことでは、ソロという個人の名前で発表しているものだけど、いろんな人と作り上げている感覚が強い。

ロザリーナ:むちゃくちゃ強いですね。例えばライブにしても、私が前に立って歌いますが、そのライブはみんなで作るものだし、いろんなスタッフさんたちのアイデアが詰まっているものだから。それをちゃんと成し遂げないといけないな、というか。自分は表に見えやすい存在ではありますが、いろんなスタッフたちの意見をなるべく聞きたいんですよね。私結構、意見が偏ってるんです。なので、いろんな人たちの意見を聞くことで、そういうふうに感じるんだと思うことが多くて。だから、いろんな人の意見は刺激的なんですよね。

ーーいろんな意見が出て、自分のやりたいことはなんだっけ、と思ってしまうことってありません?

ロザリーナ:ありますよ。これをやったほうがいいよ、あれをやったほうがいいよっていう言葉の波に乗っちゃった感じで、止められないことはありましたね。それは気づかないうちにそういう波に乗ってしまっているときもある。私が単純なので、そうやってやればいいですねって、私もその気になっていて。でもふと我に帰る瞬間がくるんですよね。家で歌詞とかをまとめているときとかに、これでいいんだっけ? って、ふとしたときに思うことがありますね。

ーーそこは自分の、“これでいいんだっけ?”っていう疑問を大事にする。

ロザリーナ:大事にします。みんなの言っていることもなるべく取り入れたいけど、最終的にはそれを踏まえた上で自分がどう思うかなんですよね。音楽でもそこを書いていきたいとて思うんです。じゃないと、嘘になっちゃうから。

ロザリーナ

ーーまた、壮大なお芝居やミュージカルを見るようなサウンドの「NOAH」が面白いなって思ったんですが、これはどういう発想だったんですか。

ロザリーナ:私は、神話や昔の物語とか、あとは偉人の名言集みたいのを読むのが好きなんですね。あるとき、ノアの方舟の話を読んで、すごくいいなと思ったんですよね。ノアの方舟の話が、私たちが生きているこの世界でもしも起こっていたとしたら、今この世の中にいる人は全員、ノアの血筋の人たちなわけじゃないですか。ノア一族以外は神様が洪水を起こして流し去ってしまったから。ノア一族という、優しい血筋の人しかいないはずなんだけど、もしもう一度神様が怒って、同じことが起きた場合、今の自分はきっと舟には乗せてもらえないんだろうなって思ったことがあったんです。でもそんなときに、救ってくれた一言があって。だから、これは謝罪の歌なんですよね(笑)。結構昔に作った曲だったんですけど、落ち込みながら作った記憶があります。

ーー神聖なムードがある曲調ですが、曲を書いた際は具体的なアレンジのイメージはあったんですか。

ロザリーナ:まさに神聖な感じですね。今回はコーラスの人たちにも来てもらったり、あとはストリングスが入っていたりとか、まさに完成したようなアレンジになったらいいなって思っていたんです。

ーー過去の自分を描いた曲がこんなふうに美しい曲になっていくのは救われた感じもありますね。昔書いた曲ということですが、発表するタイミングは今だと思った理由は?

ロザリーナ:何年かかけて作ってきた曲なんですけど、そういう未発表のデモの曲とかは、最近作る曲とはまたちょっと曲調が違ったりするんです。この曲はいつか出したいなとはずっと思っていたんです。前回の『ロザリーナⅡ』というミニアルバムの流れもあって、この曲も出したいなっていうのは思っていました。

ーー「盾」という曲は、ボーカルがほかの曲よりも感情的に歌っているように聞こえるなって思っていたんです。語るように歌う曲が多い中で、この曲の強さというのが異色の歌だなって思いました。

ロザリーナ:「盾」は、このアルバムのなかではレコーディングが奇跡的に早く終わった曲だったんです。これも「NOAH」と並ぶくらい、昔の曲なんですけど。歌い慣れていたというか、メロディが体に入っていたのはあるかもしれないですね。ストレートなメロディのラインで、歌詞的にもまっすぐな感じで歌ったほうがいいなというのは思っていたので。ピュアな感じというか。自分の若いときの気持ちだから、若い気持ちのまま歌えたらいいなとは思いました。

ーー過去にライブで披露したことはあったんですか。

ロザリーナ:一度もないですね。これは自分でも忘れていたくらいのデモのデモっていう感じだったんです。今回のアルバムの選曲をするときに、打ち合わせでスタッフたちとやりたい曲をバーっと出していったんですけど、スタッフが“「盾」がいいと思いました”と言って。え、聞き間違いですかっていう(笑)。そのくらいの曲だったんですよね。でも、これを私の好きなアレンジャーの方にお願いして、アレンジもしてもらって。弾き語りのデモ状態だったものが、アレンジされて“どうですか?”って送られてきたとき、“感動しました”って返しました。

ーー結果的に、アルバムのテーマにもしっくりとハマる内容ですしね。ピュアな衝動がここにあるみたいな曲ですし。

ロザリーナ:本当にびっくりしました、好きな曲になったので。懐かしい感じもあるし、昔のピュアさもちょっと思い出しましたね。よく曲を書く上では嘘を書きたいくないと言っているんですけど、それがちゃんと自分に返ってきたというか。本当のことしか書いていないから、そのときのことを思い出したし。昔の自分が書いたメッセージのように見えたから。その時の気持ちが蘇ったなって思って。

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