NMB48 山本彩加、同期 5期生に送った優しいエール 功績とともに振り返る卒業コンサート

NMB48山本彩加、卒コンレポ

 NMB48の山本彩加は、完璧と呼ばれるアイドルだ。同期や後輩はもちろん、先輩メンバーも彼女をアイドルの鑑のように話す。

 NMB48としての4年半の功績は偉大だ。2016年、中学2年生・13歳の若さでグループに加入した山本はお披露目から約4カ月という早さでチームNに昇格。『ベストヒット歌謡祭』(読売テレビ・日本テレビ系)では「僕はいない」でテレビ初出演にして単独センターに抜擢。昇格から約2カ月後に発売された16thシングル『僕以外の誰か』で初選抜入りと、加入初期から次世代エースとして期待される存在であった。

 AKB48としての選抜入りも果たし、個人としては『Seventeen』の専属モデル、梅山恋和、上西怜とのユニット・LAPIS ARCHの結成など、あらゆるフィールドで歩みを進めていった先にあったのが、23thシングル『だってだってだって』での梅山とのダブルセンターだった。昨年も吉田朱里や村瀬紗英など先輩メンバーが卒業していく中で、今後は山本がNMB48をより牽引していく存在になると誰もがそう思っていたであろう。2020年12月28日、自身の冠ライブ『この瞬間(とき)を。』でグループからの卒業と芸能界からの引退が発表される。

山本彩加
山本彩加

 NMB48の活動の最中、山本は看護学校に進むための受験勉強をしていた。この春、高校を卒業する山本は看護学校に合格し、4月からは看護の道へ。母と姉が看護師であり、特に姉は新型コロナウイルスの患者を担当。医療従事者として人を助けるその姿に突き動かされ、自分も心に寄り添える看護師になりたいと医療の道を志したという。聡明で優しく、それでいて負けず嫌い。彼女が選んだ新たな人生に誰もが、山本彩加らしいと思ったことだろう。

 卒業発表から約2カ月。3月3日、大阪・オリックス劇場で開催された『山本彩加卒業コンサート〜最後の一色〜』は、これまでの4年半が詰まった山本彩加の集大成と思える公演だった。ステージの幕が開き立っていたのはトランペットを構える山本。空手、バスケと並ぶ特技のトランペットを演奏し、「GIVE ME FIVE!」の〈卒業とは出口じゃなく入り口だろう〉という明るく前向きな卒業メッセージを届ける。

 アンコールを含む、全28曲はそれぞれ意味合いの込められたブロック、選曲で構成されている。アイドルに疎く姉の応募でNMB48に合格した山本が当時オーディションで歌った「潮騒のメモリー」。まだ加入間もない頃の『6周年記念コンサート』にてソロで歌った「やさしくするよりキスをして」、『ベストヒット歌謡祭』でのステージが蘇る「僕はいない」と懐かしい3曲では、4年半で頼もしく成長した山本の大人びた姿が印象的だ。

 本編前の前座として浅尾桃香、小川結夏、瓶野神音、黒田楓和、佐月愛果、南羽諒が「待ってました、新学期」を披露したように、卒業コンサートでありながらも7期生メンバーがステージに参加する機会も多く設けられていた。「檸檬の年頃」や「Good Timing」、「ごめんね、好きになっちゃって…」、「ランナーズハイ」など、『7期生研究公演』や『NAMBATTLE ~戦わなNMBちゃうやろっ!~』を経ての成長ももちろんあるが、こうして山本と一緒にステージに立てたということが後に彼女たちにとって大きな財産となっていくことだろう。

 圧巻だったのは、「山本彩加 with だんさぶる!」として披露した激しいダンスパフォーマンスだ。ダンス経験がなかった山本は加入当時、お世辞にもダンスの上手いメンバーではなかった。オーディション映像は今でこそ笑える昔話になっている。早くから芽生えていたプロ意識とたゆまぬレッスンによって、山本のダンスはメキメキと上達。「Teacher Teacher」はAKB48として選抜入りした山本にとっても思い入れの詰まった楽曲だ。48グループNEXT12の「モニカ、夜明けだ」、山本チームNで踊っていた「孤独ギター」、NMB48で初選抜入りした「僕以外の誰か」、歌詞が卒業とリンクする「僕だって泣いちゃうよ」を立て続けにパフォーマンス。「僕以外の誰か」の振付は3つのタイプをミックスさせたバージョンであり、本来の山本のポジションにこれからを担う存在の塩月希依音がいたのも印象的だ。

 そして、山本の卒業の門出に最も彩りを与えていたのが同期の5期生6人だ。小嶋花梨とは『届かなそうで届くもの』公演での2人の初ユニット曲「禁じられた2人」を。先日、インタビューの中で小嶋に山本の卒業について尋ねた際、「私はキャプテンとして、あーやんはエースとして2人で違う立場からNMB48を引っ張っていく存在になれるのかなって感じていた部分があった」と答えていた。時にはキャプテンの重責を山本がカバーする、互いに頼れる存在であった2人。このまま山本と小嶋がグループの先頭を切って京セラドーム大阪に立つ未来もあったのだろうか、と想像してしまった。

 今回の卒業コンサートのクライマックスと言っても過言ではなかったのが、梅山との「今ならば」だ。本編ラストを飾った「だってだってだって」でダブルセンターに立つ梅山本の2人だが、梅山が山本に宛てた手紙にもあるように、いつの頃からかライバルのようになり、お互いが意識をして微妙な距離感ができたこともあった。つかず離れずの距離がちょうどいい関係性。かつての山本彩と渡辺美優紀が一番近いのかもしれない。〈今ならばちゃんと言える/見せなかったすべてのこと/今ならば そう素直に/心を開けるんだ〉(「今ならば」)。ビジョンに映し出される思い出の写真を見て、2人の頬には涙が伝う。山本が梅山の腰をポンポンと優しく叩くのを見て、「頑張れ」とエールを送っているようにも思えた。

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