『あつ森』CMでも話題のThe Songbards、聴き手の胸打つ“等身大のポップネス”
ふとテレビで見かけたNintendo Switch『あつまれ どうぶつの森』のCMにThe Songbards「窓に射す光のように」が流れていて耳が傾いた。昨年6月17日に配信リリースされ、ファンの間で人気だったナンバーが起用されたようだ。日常生活を描いた映像で、楽曲が持つナチュラルな世界観と見事にハマっていた。
The Songbardsとは、2017年3月に神戸で結成された4人組ロックバンドだ。The BeatlesやOasisらの影響を感じる美しいメロディとコーラスワーク、躍動するビートセンスを持つロックンロールの申し子たち。The LibertinesやThe Strokesなど、ガレージロック・リバイバル以降のポップセンスをも併せ持つロックの楽しさは、キャッチーな「リトル・ヴァンパイア」「マジック」「太陽の憂鬱」といった楽曲に表れ、さらにスピッツなどメロディアスなジャパニーズロックへのリスペクトも感じられる。「悪魔のささやき」「Inner Lights」を聴けば、そんなポテンシャルの高さを感じてもらえるだろう。
注目は、『あつまれ どうぶつの森』のCMで流れているゆったりしたビートにたゆたう「窓に射す光のように」だ。
日常を文学的かつ哲学的に描いた上野皓平と松原有志による言葉の魅力が、コロナ禍の日々の、心の隙間を埋めてくれる。「窓に射す光のように」での、輝いていた日々を懐かしむ小説のワンシーンのような一節。坂元裕二脚本で話題の映画『花束みたいな恋をした』のサウンドトラックとしても似合いそうだ。心の内をなぞる葛藤と不安を抱えた繊細なる世界観。しかしながら、やわらかな木漏れ日のように、隔てられた境界線を優しく溶かしてくれる描写が美しい。
首都圏1都3県で緊急事態宣言の延長が発表されたつい先日。外出がはばかられる日々、『あつまれ どうぶつの森』の世界で人肌を感じるバーチャルな交流。しかしながら、テレビから流れてきた「窓に射す光のように」という楽曲は、聴く者に等身大のポップネスというリアルな温かみを与えてくれた。ポップミュージックとは時代を映し出す鏡だ。ポップソングを紐解くことで、人と生活が見えてくる。コロナ禍で人との距離を感じる時代、ぽっかり空いた心の隙間を埋めてくれるのが気持ちに寄り添う音楽であり、透明感ある澄んだ歌声が心のうちに響き渡る。