SHINeeが突き詰めた“王道に属さない表現” 2年半ぶりカムバックに至るまでの軌跡
2013年にリリースした「Dream Girl」のスタンドマイクダンスや「Why So Serious?」のゾンビダンスなど、SHINeeがパイオニアとも言える特徴的なパフォーマンスがこの時期にも多く誕生したが、その頂点に立つのは、先述のトニー・テスタによる「Everybody」だろう。彼らのパフォーマンスの中でも最高難度のコレオと言われ、コンセプト、ダンス、楽曲、すべての面でSHINeeの代表作とも言っていいほどのインパクトと完成度を誇る1曲である。
2014年から2015年前半にかけては、テミンの1stミニアルバム『ACE』、ジョンヒョンの1stミニアルバム『BASE』と、メンバーそれぞれのソロ活動が始まった。「Everybody」は見る側にも緊張感と集中力を要求する磨き上げられた刀のような楽曲だったが、次のカムバック曲となった2015年の「View」は、がらりと変わってトレンディでエフォートレスな印象のナンバー。手掛けたのはイギリスの作曲家チーム・LDN Noiseで、近年ではITZYやMOSTA X、NCTや中国のアイドルなど幅広く楽曲提供しているが、「View」ではその洗練されたシグネチャーサウンドとSHINeeのR&B的なボーカルの組み合わせが際立っている。 作詞はジョンヒョンで、メンバーそれぞれのボーカル特性を踏まえ、この曲に関してはある程度の画一性が必要と判断。ライムや音の組み合わせを考えながら作成したという。続く『Married To The Music』では、ファンキーなディスコにコミカルなB級ホラー的ビジュアルという、また新しい組み合わせを見せた。2016年リリースの「1 of 1」は、ニュージャックスイングな楽曲と90’sレトロなビジュアルなど、昨今のK-POPを席巻している「ニュートロブーム」の先駆けとも言える1曲だった。
2018年にリリースした『The Story Of Light』は3部作。メンバー自身が語ったアルバムのコンセプトは、「『ep.1』は大衆から見たSHINee、『ep.2』はSHINeeから見たSHINee、『ep.3』はファンから見たSHINee」であった。大衆的な親しみやすさというよりは、サブカルチャーとしての「アイドル」らしさとアーティスティックな感性で、常にコンセプチュアルな作品を作り出してきたSHINeeだが、今作のコンセプトはまさに「SHINee自身」そのものだったのだろう。その名の通りアイドルとしてのポジティブな輝きは失わないながらも、「コンセプトを表現するエンターテイナー」として、さながらF1カーを操るトップドライバーのように自らの仕事に徹してきたプロフェッショナルなSHINee。だが、今作ではかつてないほどの困難や悲しみに対する「メタ的な視線」と、自分たちの率直な感情を同時に昇華して見せたという点で、まさに新たな1ページを描いていた。
2018年にはメンバーそれぞれがソロを発表し、1989年生まれの最年長のオンユから、1991年生まれのキー、ミンホがそれぞれ兵役のために入隊。SHINeeとしての活動ができない間は、末っ子のテミンがソロやSuperMとして精力的に活動を行ってきた。昨年2020年11月にミンホが除隊し、2年ぶりに完全体でのカムバックが今年2月22日に実現した。
7枚目のアルバムとなる『Don't Call Me』は、ダブステップの要素を取り入れたタイトル曲の他、シンセウェイブやフューチャーハウスなどSHINeeとしての新たな一面を見せてくれる1枚となっているが、これらのサウンドがどこか不穏さを感じさせるティザーのビジュアルとどのようなケミストリーを起こすのかも期待される。
■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
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■リリース情報
SHINee 7thフルアルバム『Don’t Call Me』
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<収録曲>
01 Don’t Call Me
02 Heart Attack
03 Marry You
04 CØDE
05 I Really Want You
06 Kiss Kiss
07 Body Rhythm
08 Attention
09 Kind