『僕等はまだ美しい夢を見てる ロストエイジ20年史』クロスレビューVol.2:NOT WONK 加藤修平「生活という言葉の意味を問う」
LOSTAGEというバンドを認識したときからLOSTAGEは3人だった。むしろ私にとっては初めから圧倒的にトリオの代表、NOT WONKが手本にするべきバンドだった。そして既に五味さんは地元奈良に店を構えていたので、長くローカルのバンドとして奈良に根差しながら、それを気負うことなく淡々と音楽を、生活を続けてきた大人だと勝手に認識していた。正直言うと、LOSTAGEのそれまでの歴史に興味が湧いたことはなかった。かつては4人組だったということを話には聞いたことがあったが、それより私は3人に鳴らされる音に興味があった。そのムードに興味があった。本来ならばその時点でバンドの道程に興味を持つのが自然かもしれないけれど、2015年に初めて観たLOSTAGEの演奏にその初動が遅れた。そして結局今。
LOSTAGEは今年で20年になるバンドだ。きっとこの本にはその紆余曲折が、波乱万丈な歴史が記されているのだろうと考えていたのだが、予想は全く裏切られた。それはその苦悩に対する衝撃ではない。これまで私がLOSTAGEに抱いていたシンパシーの理由は、単に生まれ育った街に軸足を置くものとして、トリオのロックバンドとして感じる共通項の多さではなかった。読み終わってすぐの今現在、あまり冷静でないのでうまく説明できる気がしないけれど、LOSTAGEが、五味岳久が、五味拓人が、岩城智和が辿ってきた歴史が、NOT WONKが、僕が、もしかしたら全ての人が今までの歴史の中でぶち当たってきた、そして向き合うべきテーマだったから。息が止まれば人が死ぬときは一瞬だけれど、既に人生は思ったよりも体感上長い。明日死ぬかもしれないけれど死なないかもしれない。朝目が覚めたらそれは生きているということだ。そういってられる時間はあとどれくらいあるだろうか。どれだけ続くのだろうか。どこまで続ければ良いのだろうか。○か×で決めることのできるような命題はなく、水が上から下に流れるような道理も思った以上に少なかった。生活という言葉の意味を問う。ただ自分がそこにいるだけなんだろう。そしてこれからも自分はそこにいるんだろう。LOSTAGEが続けるのはその理の実証。その美しさのもとに音は集う。というより実は音楽もずっと前からそこにいるんだろう。少し臭すぎるんだけど、他に信頼できるものがないから、きっとそれだけは本当なんだろう。
■書籍情報
タイトル:『僕等はまだ美しい夢を見てる ロストエイジ20年史』
著者:石井恵梨子
ISBN:978-4-909852-15-1
発売日:2021年2月25日(木)
価格:2,500円(税抜)
発売元:株式会社blueprint
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NOT WONK オフィシャルサイト https://notwonk.jimdofree.com/