2021.02.11 16:00

『ログ・ホライズン円卓崩壊』EDテーマ曲で話題　『X-factor』出身歌手・大城美友、胸を打つ天性の歌声

文＝榑林史章

明日をどう生きるかを教えてくれる『TURNING POINT』

大城美友「TURNING POINT」全曲視聴トレーラー

　大城は2月10日に、「ブルー・ホライズン」を収録したミニアルバム『TURNING POINT』をリリースした。新型コロナウイルスの脅威によって一変した日常の中で、音楽を発信することの意味と向き合い、ここを転換として止まることなく進化したいとの思いを込めて制作された。

大城美友「ヤンチャ風」MUSIC VIDEO

　かき鳴らされるアコースティックギターと共に、軽やかに歌声を聴かせる「ヤンチャ風」は、ありのままの自分をそれで良いんだと肯定してくれる。エモーショナルなロックサウンドに乗せて、自分自身が生まれたことの意味を気づかせてくれる「wonder」。どこか懐かしさのあるフォーク調のメロディラインが印象的な「ブルー・ホライズン」は、シンフォニックなサウンドと重厚なコーラスによって実に壮大な景色を見させてくれる。大自然の中で撮影されたMVを見れば、些細な悩みも吹き飛ぶだろう。16歳の時の実体験を歌った「あのね」は、キャッチーなサビのメロディと等身大の言葉で思わず口ずさみたくなる。壮大なバラードの「believe」は、胸の奥底から沸き出す音楽の持つ力や人間の底力を信じる気持ちを、パワフルに情感たっぷりの歌声で表現した。大城の持つ声の求心力がもっとも感じられる曲だろう。そしてラストには、弾き語りの「べっこう飴と君の真ん中で」を収録。恋の結末を少しずつ受け入れていく様子が切なく歌われている。

　アニメ『ログ・ホライズン円卓崩壊』の主人公シロエたちは、ある日突然ゲームの世界に引きずり込まれ、元に日常に戻るべく奮闘する。その姿はまさに、コロナ禍の今を必死に生きる今の人々だ。そんな世界に必要なのは、強硬な指導者でもなければ賢者でもなく、それぞれの胸の奥底にある人を信じる心や、自分を認めてくれる誰かの声だ。大城の歌から感じるのは、何度つらい目に遭ってもどうしようもなく人間を信じたいと願う気持ちであり、それは誰もが持っている気持ちの代弁だ。……〈忘れるな本当の強さを君はもってる〉（「wonder」）、〈何度も立ち上がればいいから目指してた今日と違ったとしても〉（「ブルー・ホライズン」）、〈まだまだ折れそうな翼だとしても　信じて〉（「believe」）……。大城美友のミニアルバム『TURNING POINT』は、聴く者をやさしく包み込んでくれる毛布であり、立ち上がろうとする震える足を支えてくれる杖。今という転換点を越え、明日をどう生きるかを教えてくれている。

■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ／クラシック、ロック、J-POP、アニソン／ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル､MusicVoice､リアルサウンド､music UP’s､アニメディア､B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。