安室奈美恵やきゃりーにも愛されたSOPHIE、バイラルチャート首位に 実験性とポピュラリティを繋ぎ合わせた“若き奇才”の功績

 さらにSOPHIEは、マドンナやアルカを筆頭に、プロデュースワークやコラボレーションが多いことでも知られている。安室奈美恵の2015年発売のアルバム『_genic』収録曲「B Who I Want 2 B feat. HATSUNE MIKU」で作詞・作曲・プロデュースを手掛けた他、英国のカルチャー誌できゃりーぱみゅぱみゅと対談し、日本独特の文化“kawaii”についてや、未来の音楽シーンについて語っている。

安室奈美恵 / 「B Who I Want 2 B feat. HATSUNE MIKU」Music Video

 さて、「Immaterial」について触れていきたい。このランクインは、冒頭で述べた悲運が引き金になったのは間違いない。「Immaterial」はいわば彼女の代表曲。Spotifyの再生数でも「Immaterial」がトップである。スタイリッシュなエレクトロニカから、アンビエントを含む繊細なバラードまで、曲毎に印象が変わるサウンドクリエイションが持ち味のSOPHIEだが、「Immaterial」は彼女の楽曲の中でも、飛び抜けてブライトでキャッチーな1曲である。アバンギャルドだが軽快なビートを軸にしたポップチューンで、何度もリピートされる歌のフレーズもキュート。途中のブロックでは、2000年代のR&Bフレイバーが突然フロントに出て来て、彼女の甲高いボーカルもブラックミュージックのニュアンスを巧みに表現している。まさに本人のように、ころころ変わる豊かな表情が魅力。楽曲そのものに愛嬌があるところも、彼女ならではと言えるだろう。日本のバイラルチャートでは「Immaterial」のみのランクインだが、グローバルバイラルチャートでは他に「It's Okay To Cry」「Faceshopping」など複数曲がランクインしている。

SOPHIE — It's Okay To Cry (Official Video)
SOPHIE — Faceshopping (Official Video)

 最後に。SOPHIEは、エレクトロニカというジャンルの創世記を担った1アーティストであるAutechreの大ファンであることを公言している。そのAutechreがリミックスした「BIPP (Autechre Mix)」がつい先日リリースされた。冥福を祈りたい。

Autechre「BIPP (Autechre Mix)」

■伊藤亜希
ライター。編集。アーティストサイトの企画・制作。喜んだり、落ち込んだり、切なくなったり、お酒を飲んだりしてると、勝手に脳内BGMが流れ出す幸せな日々。旦那と小さなイタリアンバル(新中野駅から徒歩2分)始めました。
Piccolo 266 インスタグラム

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