オリヴィア・ロドリゴはなぜ“たった1曲”で偉業を成し遂げられたのか? 若者の関心掴む、新たなヒットの在り方を考察

オリヴィア・ロドリゴが“1曲”で成し遂げた偉業

偉大なる先輩であるテイラー・スウィフトによる「一押し」

 <Geffen Records>は隠していたオリヴィアとの契約を1月5日に公式発表。さらにわずか3日後の1月8日に「drivers license」をリリースすることを告知したのである。

 
 
 
 
 
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 1月8日に速攻で楽曲を再生したファンは、この曲がオリヴィアと交際が噂されていた、『HSM』で元カレ役を演じた俳優/シンガーであるジョシュア・バセットとの失恋を歌ったものであること、さらにはジョシュアの現在の交際相手であるサブリナ・カーペンターについて言及していることも確信し、ファンダムを軸として、この曲の話題や考察が一気にSNS上に流れていく。そして、ファンダムと常に新しい楽曲を求めるTikTokのインフルエンサー達を中心に大量に投稿されると、楽曲単体としてもリアルな失恋を歌ったその内容に深く共感した若年層を中心に強く支持され、リリース当日中のバイラルヒットを実現させたのである。

 さらにこの勢いを後押ししたのが、オリヴィア自身が多大な影響を受けたアーティストでもあるテイラー・スウィフトだ。リリース翌日の1月9日、オリヴィアは自身のInstagramに「drivers license」がiTunesのソングスチャートでテイラーの楽曲に続き3位にランクインしたことを投稿。すると、この投稿に対して何とテイラー本人が「これは私の子ども。とても誇りに思う(I say that's my baby and I'm really proud.)」と自身の母親の発言を引用してオリヴィアを称賛したのである。

 
 
 
 
 
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 「テイラーによるレコメンド」によって、これまでファンベースやTikTokを中心に盛り上がっていた「drivers license」がテイラーのファンダム、さらには各種メディアの注目を集めることとなる。様々な角度でこの曲を知り、そして魅了された人々が楽曲をさらに拡散していった結果、リリースから4日目となる1月11日にはSpotifyにおける1日の再生回数が1300万回を超え、デイリー再生数歴代1位(ホリデーソングを除く)を達成。リリース初日に実現したバイラルヒットが、数日後には世界的な大ヒットとなっていたのである。そこからの成功は、冒頭で記載した通りだ。

 ここで重要なのは、「若い世代に人気のスターが、自身の恋愛ゴシップを歌にしたからヒットした」というのは非常に短絡的な見方であるということである。この曲がただのゴシップソングであれば、バイラルヒットまでは実現できたかもしれないが、テイラー・スウィフトによる後押しも、ポップリスナー全体への波及も起きることはなかっただろう。あくまでオリヴィア・ロドリゴというアーティスト、そして「drivers license」という楽曲に強い魅力があったからこそ、ここまでの成功を実現することが出来たのである。

 逆にもし「drivers license」の歌詞が全くゴシップ要素を含まないものだったとしたら、あるいは昨年のInstagramの投稿がなかったとしたら、これまで記してきた記録の数々は起こることなく、日々リリースされる大量の楽曲の中に埋もれてしまったかもしれない。断片的な情報を元に考察するファンダム文化が定着した現代だからこそ実現出来た、新たなヒットの在り方だと言えるだろう。

 現代の若者の関心を掴み、バイラル化させる話題性とアーティスト/楽曲の根本的な魅力の双方がそれぞれ強力に機能したからこそ、この奇跡的とも言える快挙が実現したのである。そして、その両方を兼ね備えている時点で、現代のポップシーンにおいてオリヴィア・ロドリゴが破格のアーティストであることは、すでに証明されたようなものだ。現在、彼女は高校生活を続けながらEPの制作に取り掛かっているとのこと。そこに収められる楽曲が「drivers license」と同様のインパクトを持つかどうかは全くの未知数だが、少なくとも今は、彼女の新たな音楽を待ち望んでいる人が世界中に溢れている。

■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。 シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
Twitter : @neu_mura

オリヴィア・ロドリゴ
「drivers license」

■配信情報
オリヴィア・ロドリゴ
「drivers license」
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