花譜、カンザキイオリら擁する<KAMITSUBAKI STUDIO>が創生する音楽×物語 統括Pに聞く、2030年見据えたエンタメの考え方

花譜、カンザキイオリら擁する<KAMITSUBAKI STUDIO>が創生する音楽×物語 統括Pに聞く、2030年見据えたエンタメの考え方

顔出し前提だと見つからない才能もある

ーー<KAMITSUBAKI RECORD>を運営する上で、当初はどういうレーベルにしたいと考えていましたか?

PIEDPIPER:音楽に関して言えば、カンザキイオリを筆頭に次世代を担うアーティストが集まってきてくれたので、その若い才能に力を借りてなんらかのプロジェクトを作りたいと思っていました。あと、花譜の活動を通して気付いたのですが、顔出し前提だと見つからない才能もあるなと。才能がありながらもプロになろうとしていない人たちは、純粋に歌が好きでSNSやアプリに投稿はしていても、通常のオーディションなどではなかなか浮かび上がってこないんですね。例えば、東京に住んでいないとか、ご両親が顔出しを反対するとか、いろんな障壁があるのですが、バーチャルや覆面はその壁を外すことができる。もしかしたら、そういう見過ごされてしまう才能のなかに、次世代の歌姫が隠れているのではないかとは常々思っています。具体的な音楽性の括りはあるようでないので、僕らにとって価値のある歌声を発掘して、それを最大化してくれる柔軟な才能を持った若いアーティスト/クリエイターとのコラボレーションを大事にしていきたいとは思っていました。

ーー2019年10月のKAMITSUBAKI STUDIO設立から、新型コロナウイルスに見舞われた異例の2020年をどのように振り返りますか?

PIEDPIPER:正直、2020年は本当に苦行の1年だったという感覚はあります。2019年11月に僕らのフラグシップスペースを渋谷PARCO GALLERY X跡地に1年限定でオープンしたのですが、それも調子が良かったら延長しようと思っていたんです。当初の売り上げ自体は絶好調で予想以上に反響がありましたが、コロナになってからはお客さんが減ってしまって、トータルの収支で言えばマイナスになりました。そこをアップデートできなかったことは厳しかったです。もうひとつは、花譜の2ndワンマンライブ(『不可解弐Q1』)もバーチャルライブで行う予定ではなかったので、今まで作ったことがないものを作り上げるという難しさもありましたね。ただ、知見がないながらも、バーチャルライブの中では先鋭的なものが作れたと思っていて。過去最高に大変ではありましたが収穫も多かったように思います。ビジネスとしては厳しい1年でしたが、結果的には知的好奇心が湧く発見や発明がいろいろ出来たかなと。

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ーー苦難はありながらも、新しい可能性も見つかったということですね。KAMITSUBAKI STUDIOにはバーチャルとフィジカルのアーティスト、クリエイターも所属されています。所属している方々の共通点や、アーティストを選ぶ上での基準はありますか?

PIEDPIPER:僕らの場合、バーチャルにせよ、フィジカルにせよ、チームとしてクリエイティブを行っている認識が第一にあります。中心にある歌の才能は最も大事ですが、僕らのやっていることはチームだからできることで、一人の才能だけではできないんですよね。だからこそ、チームやプロデュースを必要としている方としっかり組んでいきたいと思っています。そういう考え方のもとで2019年にはオーディションも行い、そこから育成している子達も数名いるので、2021年にはデビューさせてあげられるのではないかと考えています。

ーー所属アーティストの方々には共通性を感じますし、特にバーチャルシンガーの方々は歌声を重要視されている印象があります。

PIEDPIPER:そうですね。バーチャルアーティストに関して言えば、やはり歌声の成分が大事だと思っています。良い歌声には理屈抜きで心を揺さぶる力があると思っていて、楽曲が良くてもそこが欠けているとヒットにはなかなか至らないと思っています。

作り物感が強くなると人に共感してもらうことが難しくなる

ーー現在、KAMITSUBAKI STUDIOには、花譜、理芽、春猿火、ヰ世界情緒、幸祜という5名のバーチャルシンガーがいますが、それぞれどのような形でキャラクターや世界観を描いているのでしょうか?

PIEDPIPER:一人一人考えていくのも大事なのですが、この5人でどんな世界観を描いていくのかを念頭に置いて考えています。彼女たちの歌を軸にしながらも、そこに物語性を足していくことにはなると思うのですが、全体で描きたいストーリーは一つあるのですがまだ詳細はお答えできないですね。

ーーそこは「神椿市建設中。」ともつながる部分ではありそうですね。ちなみに、フィジカルとバーチャル、それぞれのアーティストをプロデュースする上での違いはどこに感じますか?

PIEDPIPER:ジャンル的には全く異なるものだとは思うんですけど、フィジカルアーティストやボカロPに関しては、あくまでアーティストが主体でそこに寄り添うマネジメント的な動きが中心になると思います。例えば、プロデューサーの言いなりで活動しているバンドを応援したいかと言われたらそうではないと思うので、アーティストの意思を最大限尊重してプロデュースしていくというか。バーチャルアーティストに関しては、本人の意思、気質を生かしながらも、そこを取り巻く世界観などにはプロデューサーやクリエイティブチームの意思も強く反映されますね。

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ーーただ、KAMITSUBAKI STUDIOのスタンスとして、バーチャルをバーチャルとして割り切るのではなく、ちゃんと人間性みたいなところは強く押し出している印象があります。

PIEDPIPER:プロデューサーの意思が強く反映されるのは確かにそうなんですけど、完全な作り物ともまた違うんです。K-POPグループやアイドルグループも割とプロデューサーの意思が強く反映されると思いますが、そことは似て非なるものかなとも思いつつ、ドキュメンタリー要素を7割程度は残すように意識しています。おそらく作り物感が強くなるとその世界からはみ出すことが出来ないと思うし、人に共感してもらうことが難しくなります。プロデューサーの言うことを全部やってもらうのではなく、本人がより魅力的に見えるようなプロデュースをしっかりしていくことが大事だと思いますね。

ーー前回行われたバーチャルライブ『不可解弐Q1』の花譜さんからは、バーチャルとリアルがクロスオーバーするような印象を受けました。

PIEDPIPER:そこは最大の壁ですね。バーチャルだからこそファンになってくれた方々もいますが、そこからもう一歩先に進むにはそれだけだと越えられない壁があると思っていて。オンラインだけど息遣いがちゃんと聞こえるような、リアリティーのあるライブ演出をしていかないと、今度はアバターというものがどこかで障壁になってしまうこともあり得ると思っています。『不可解弐Q1』は結果的にすごくいいものができたのですが、その反面、お客さんを入れたライブをやりたいという気持ちも強くて。正直、花譜の1stワンマン(『不可解』)は演出面で少し納得いかない部分があったんですけど、一度経験したことで新しい技術にもより目を向けるようになりましたし、バーチャルライブをそのまま移植するのではなく、また新しい表現を次の有観客ライブでは見せていけたらと思っています。

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