SUPER BEAVERが今、“アイラヴユー”を届けたい人とは? 未曾有の2020年を経て完成した最新アルバムを語る

SUPER BEAVER、最新作を語る

徹底的に無駄を排除して作り上げた説得力のあるサウンド

ーーなるほどね。そうやって感じたというのは大事なポイントのような気がしますので、また後で話したいですね。柳沢さん、今回のアルバムについての手応えは?

柳沢:まずはシンプルにすごくいいアルバムができたな、よかったなって思ってますね。今回はかなり長い制作期間というかインターバルがあったんですけど、その期間中にやっぱりいろんなことがあったので。影響されるまいと思ってましたが、どうしたって普通に生活していても入ってくる部分はあるし、曲を作った時期もバラバラなぶん、SUPER BEAVERのこの数年の活動、思考そのものみたいなものがぎゅっとなったなっていう気がしていて。すごく無駄のない形でそれを抽出したみたいな感覚があります。

上杉研太

上杉:すごく感覚的な話ですけど、ベースとギターとドラムと歌と、歌詞とメロディとっていうのが全部横並びみたいな。なんか歌があるところとないところの印象がいい意味で変わらないっていう、それだけの説得力を持った音作りができていると思います。この曲にはこの音色がとか、この曲だから各楽器のバランス感はこうでなければならないとか、そういう感覚的なところまで追求して、だからこそこの楽器を使うんだとか、だからこそこのスタジオで録るんだとか、そういうレベルまでやったんです。今まではスタジオ入ってドーンって録って、後から「あそこはこうした方が良かったかもな」みたいな部分もあったりしたけど、今回はそれがないんですよ。

SUPER BEAVER 「パラドックス」MV

ーーなるほど。この状況もあったからこそ、より精度高く詰めていけたっていう。だから、聴いていてすごくシンプルに聞こえるんですよね。

上杉:その「シンプルに聞こえた」っていうのがまさにそうだと思うんですけど、徹底的に無駄を排除できたんです。3つの楽器のアンサンブルだけでどこまで説得力を持てるグルーヴが作れるのかっていうところで、そうやって1回俯瞰的に見るっていうことがすごく大事だなって。

まだ思い浮かんでいない人にまで“アイラヴユー”を届けたい

渋谷龍太
渋谷龍太

ーーその「俯瞰で見る」というのはこの時期だからこそできたというのもあるし、バンドとしていろいろな経験を重ねてきた10年があったからというのもあるし。今のSUPER BEAVERのひとつのキーワードだと思います。さっきぶーやんが言っていた「人に薦めたくなる」というのも、作った自分とは違う視点を持てたからだと思うんですよ。

渋谷:そうですね。もう1人の自分っていうか、そういうスピリチュアルなことはあんまり言いたくないんですけど(笑)、ちゃんと作品に感動しなければ歌いたくないっていうのはどこかで思っているから。だから結構聴こえ方が変わるんですよね、毎日聴いていて。それは自分がちゃんといち人間としてこのアルバムと向き合えた結果なのかなっていうのは思いましたね、今。

ーーうん。あと、たぶん受け取る側のことがちゃんと見えている、はっきりとイメージできているということでもあるのかなと思います。だからそっち側にいくこともできるというか。

渋谷:うん。何ていうか、想像力以上のものを持てるようになってきた気は正直しているんですよね。不思議な感覚ですけど、誰かに届いてる「かもしれない」じゃなくて、「届いてる」という実感。そう言葉にしてしまうときれいごとに近いですけど、この感覚としてしか捉えられないし、嘘はついてない。片鱗はずっとあったんすけど、それがより具体的になってきたのかなっていう感覚は確かにあるかもしれないです。

ーー実際、このアルバムには「誰か」がいますよね。『アイラヴユー』というタイトルだって、「ユー」がいないと成立しないわけで。

渋谷:そうですね、確かに。なんかちょっと腑に落ちた感じがします。

柳沢亮太

ーーこの『アイラヴユー』という言葉は具体的に誰かを思い浮かべながら選んだんですか? それとも、もっと大きな意味をもたせている?

柳沢:浮かんでいたし、浮かばない人にまで届けたいと思っていましたね。やっぱり、コロナに関わらず、僕らは対「人」でずっとやってきたバンドだったんですけど、そんな中でもいろんなものがこの1、2年で変わって。10年間ぐらい自分たちでやってきて、自分たちで選んでメジャーと再契約したわけですけど、その選択の裏には人の顔があるし、その具体性みたいのはすごく強かったと思うんです。僕たちが『アイラヴユー』という言葉をかけたいなって思う対象はそこにも絶対いるし、その思いを歌にしたいって、ものすごく強く思ったんです。だからそういう意味では浮かんでるし、その思いをまだ浮かべられてない人にまで届けたいという気持ちもありました。

ーーわかりました。ヤナギ(柳沢)的に今回制作でこだわったところはどんなところですか?

柳沢:個人的に初めて言ったのはスタジオのことですね。どこがいいっていうよりは、いくつか分けて録らせていただけたら嬉しいなと思っていて。そんなところ、今まではあんまりわかんなかったんですけど、やっぱり録るところによって音が違うのかもしれないっていうことにようやく気づいて(笑)。それはどっちがどうっていうよりは、漠然と一聴したときに、いい意味で耳触りが違うようにしたいなって思ってたんですよ。それがまとまったときに、何かこう、大きな球体のようなエネルギーを持ったものにしたいなって。だからスタジオもスタッフにおまかせというよりは、漠然としたイメージだけど持ち寄りながら、最初からヒロ(藤原)とも「ドラムはどういう鳴りがいい?」とか会話したりして。

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