ずっと真夜中でいいのに。が示した“思考を止めない大切さ” コンセプトで魅せた『やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)』

ずとまよ、が示した“思考を止めない大切さ”

 「眩しいDNAだけ」からは、淡々とラストを目がけて駆けていく。広がっていくボーカルは痛快で、キュインキュインと鳴るギターにも全くもって負けていない。何がやりたいかわからないふりをしているときに書いたナンバーは、迷いを孕むと共に〈今は傷つくことも願ってる〉と宣言するしたたかさも誇示していた。

 他者に関わる自分のスタンスを見つめ直しながら、本編は『潜潜話』のオープニングである「脳裏上のクラッカー」で締結。なりたい自分となれない自分に揺れる様や目に見えるものを信じ切れない苦悶を鮮やかに描き、“シコウ”の時間を作り上げた。

 コンセプトを持つ多くのライブは、問題提起から結論まで本編にまとめあげるのが一般的であり、+αの立ち位置にアンコールが置かれることも少なくない。一方で『やきやきヤンキーツアー』は、アンコールまでメインディッシュと言っても過言ではない。1曲目で思考の時間へと導くと、自分自身と向き合う前半、他者との関わりを見つめ直す後半へと展開。アンコールは、今の彼女のスタンスを打ち出すと共にエピローグとして機能している。

 「暗く黒く」「正しくなれない」の2曲が、最後の最後で並大抵ならぬパワーを放っていたのは、単に映画のタイアップだからということではないだろう。両曲に根付いているのは、学ぶこと・気づくこと・知ることの幸せだ。それにより、自分がわからなくなってしまうときもあるし、他人を信じられなくなってしまうときもある。たとえそうだとしても、思いを馳せることをやめるべきではないと、考えることを投げ出すべきではないと伝えたかったのではないだろうか。思考すべきことは至高であり、無限に想うために必要なこと。これこそ、彼女が「お勉強しといてよ」のなかで〈解いといてよ〉と投げかけたテーマなのではないだろうか。

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 ACAねは信じているのだ。感情参考書をお勉強した人が生きる未来は、今より少しだけ明るくなるのだと。多くの人が“ヤンキー”のように、今しかできないことに悔いなく命を燃やせることを。

 キャッチーなメロディと独特なリリックセンス、儚くも凛とした歌声を擁する、ずっと真夜中でいいのに。だが、そのマインドに結びついているのは、傷つくことを恐れずに思考し行動を続ける強さだ。だからこそ、彼女たちが生み出すクリエイティブは、多くの人を魅了し続けるのである。

 ずっと真夜中でいいのに。のライブを通して今一度考えていきたい。考えることを諦めず、感じることを疎かにせず、他人と本心で向き合っていくことが、真なる幸せへと近づく一歩なのではないだろうかと。

■坂井彩花
ライター/キュレーター。1991年生まれ。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。Rolling Stone Japan Web、EMTGマガジン、ferrerなどで執筆。Twitter

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