EMPiREが全身全霊のパフォーマンスで超えた限界地点 東京国際フォーラムを熱狂の渦に包んだ全曲披露ライブ

EMPiREが全身全霊で超えた限界地点

 「みんなありがとう!」「ホントにありがとう!」「エージェントありがとう!」

 6人は目一杯の声と手を振りながらステージを右へ左へと動き回る。客席のエージェント(EMPiREファンの呼称)一人ひとりの顔を確認するように笑顔を見せながら。

 ライブ開始から35曲目となる「I have a chance!!」での一幕だ。定刻通り18時30分に始まったライブは、もうこのとき21時になろうとしていた。

 “限界突破”ーー。まさにタイトル通りのいろんな意味で限界を突破した、とんでもないライブだった。通常であれば終盤のここぞというときに放たれるナンバー「S.O.S.」で始まったことからも、いつもとは違う気合いが感じられたセットリスト。EMPiREの全37曲を、本編ノンストップで一気に駆け抜けた。昨年1月5日にZepp DiverCity(TOKYO)にて開催した『EMPiRE’S GREAT REVENGE LiVE』は、MAYU EMPiRE不在からの完全復活という劇的な内容であった。(参考記事:EMPiREが6人で果たした“リベンジ” MAYU EMPiREの歌声轟いた念願のZepp DiverCity公演レポ)あれから1年、2021年1月4日、『EMPiRE BREAKS THROUGH the LiMiT LiVE』はアンコール含めて39曲、3時間に及んだ壮絶な内容だった。EMPiREの歴史に残る、大きな意味を持ったライブであったことはいうまでもあるまい。

「EMPiRE気合い入ってます! 楽しんでいってください!」

 開演前の影アナ、WACK代表・渡辺淳之介の言葉がなんとも優しく、心強く思えた。1年ぶりとなる東京での有観客ライブ、加えてグループ最大規模会場となる東京国際フォーラム ホールAである。エージェントにとってもメンバーにとっても、いい意味での飢餓感と期待が交錯する、得も言われぬ気持ちになっていたはずだ。

EMPiRE
EMPiRE

 「S.O.S.」の軽快なギターのカッティングで幕が上がると、ステージ上には真っ白なローブを纏った6人が。すると誰かがワイヤーによって高く浮上し、のっけから場内の度肝を抜いた。NOW EMPiREだ。高いところからの景色を眺めながら歌うその表情は得意げで嬉しそうで実に彼女らしく、てるてる坊主、いや、天使のように1人だけ宙に舞っている光景は少しシュールでもあり、それがなんだかものすごくEMPiREらしい演出に思えた。

「エージェントーー!! 今日は来てくれて本当にありがとう!  みんないっしょに楽しもう!」

 MAYUが高らかに叫ぶ。6人がローブを脱ぎ捨てると、黒地に金をあしらった新衣装があらわになる。どこか異国の女帝を思わせる衣装は神々しく、瀟洒な彼女たちにぴったりだ。そのまま「SUCCESS STORY」「SELFiSH PEOPLE」と、アッパーチューンを畳み掛けていく。

 「maybe blue」からしっかりと歌を聴かせるナンバーが続く。情感たっぷりに歌うMAYU。真っ直ぐな歌声と豊かな声量を持つ彼女だが、そこに驚くほど艶やかな表現力が増していた。「I don't cry anymore」で、マイクにしがみつきながら飾ることなく、心の赴くままに慟哭性あるメロディを歌う姿が、セピア色のバックスリーンを背に滲んでいく。そこから一転、爽やかに「I have to go」へと流れいった。この2曲は同じ主人公であり、「つらい恋をした女の子が前向きに強くなっていく様子を描いている」と、YU-Ki EMPiREが持論として幾度となく語っているのだが、その関連性を表しているように思えた。どこか悲壮感を漂わせるMAYUの歌声と、明朗なMAHO EMPiREの歌声のコントラストも、それを色濃く浮き彫りにしていたように見えた。

 余談だが、筆者は先日別のメディアでMAHOを「スゴいボーカリスト10人」に選んだ。彼女は、伸びやかで豊潤な声とはにかんだような愛くるしい歌声が魅力。剛と柔、メインにもなるしフックにもなる。そうした声色を器用に使い分けるボーカリストであるが、ここにきてさらに、中低音のハスキーな鳴らし方を完全に手に入れていた。喉の鳴らし方が太い。「I have to go」で聴かせるコロコロと転がるような愛くるしい歌声、「きっと君と」での麗かな響き、「RiGHT NOW」間奏明けで、鋭い眼光と共に一瞬時を止めるようにグルーヴを操る様……思うように声が出なくなってしまった2019年の『NEW EMPiRE TOUR SEMi-FiNAL』新宿BLAZEを乗り越え、そして昨年MAYU不在のZeppで会場の空気を一気に掌握したあの歌は……より強靭なものとなっていた。

 ライブはテンポよく進んでいく。「TOKYO MOONLiGHT」で滑らかなリズムを見せ、「Buttocks beat! beat!」で勢いづける。セクシーさと実直さを兼ね備えたYU-Kiのハイキックの打点も過去最高に高く決まった。「WE ARE THE WORLD」「FOR EXAMPLE??」、EDMナンバーではドロップに合わせて6人は声の出せないエージェントとひとつになり、思い切り高く飛んで会場を揺らす。ノンストップで進んでいくライブ展開は一気呵成。途中でいつものライブと様子が違うことに気づいた。どこまでが前半で、どこからが中盤なのか皆目見当がつかなかった。「もしや、全曲やる気か……?」そう思わせながらも、流れの予想を裏切ってくるセットリスト。狂ったように乱舞していく「SO i YA」、大人びたボーカルを聴かせているかと思えば、突如狂犬のように切り込んでくるMiDORiKO EMPiREから目が離せない。そこから凛としたしなやかさで魅せていく「Clumsy」へ。NOWの屈託のない歌声が心地よい耳馴染みを生む。今まで観てきた中でいちばんエッジーな「Have it my way」、邪悪さをプンプン漂わせながらハードに攻める「RiGHT NOW」。EMPiREが放つグルーヴはエレガントでセクシーながらもソリッドだ。

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