EMPiRE、クオリティ高い楽曲にも対応できる実力派グループに WACK所属グループの特性を分析

EMPiRE、グループの特色を解説

 EMPiREは『Project aW』と名付けられたWACKとavexの共同プロジェクトによって生まれたグループだ。結成前からavexからのメジャーデビューが決まっていたため、最初から恵まれていたエリート集団だと思われがちな部分がある。デビュー以前からBiSHのライブツアーにオープニングアクトとして同行し満員の大会場でライブをやる機会を持てたし、1stアルバム『THE EMPiRE STRiKES START!!』の収録曲「Black to the dreamlight」がテレビアニメ『ブラッククローバー』のエンディング曲に採用されたりと大きなタイアップも獲得した。それは他のWACKのグループではなかったことである。結果としてデビュー直後から人気は獲得していたし、デビュー直後の初ワンマンライブは1300人以上収容できるマイナビBLITZ赤坂を完売させ、デビュー2年以内で2000人以上収容できるZepp DiverCity(TOKYO)でのライブを成功させた(コロナ禍で中止となったものの、今年の春ツアー『EMPiRE SUPER FEELiNG GOOD TOUR』のZepp Tokyo公演も完売)。

 しかし人気を獲得した理由は恵まれた環境にいたことだけが理由ではない。それは理由のほんの一部分である。最も大きな理由はアイドルとしても音楽としても魅力的なグループだからだ。

 EMPiREの楽曲は他のWACK所属グループと同様に松隈ケンタが率いるSCRAMBLESがサウンドプロデュースしている。しかしBiSHやBiSのロックサウンドとは違う。GANG PARADEのような雑食な音楽性とも違う。バンドで例えるならばサカナクションやフレデリックのように、キャッチーなメロディを軸としてロックとダンスミュージックの融合を目指した楽曲が多いように思う。「EMPiRE is COMiNG」や「RiGHT NOW」などがそれに当てはまる。また他のグループよりもJ-POPの王道をなぞりつつ、壮大なアレンジで徹底的に作り込んだ完成度の高い楽曲も多い。「アカルイミライ」や「ピアス」がそうだ。

EMPiRE / アカルイミライ [OFFiCiAL ViDEO]

 松隈以外の作曲家も多くの楽曲を作っていることも珍しい。松隈作品が最も多いし、他のグループでも松隈以外の作曲作品もあるが、EMPiREは他のクリエイターが作曲する比率が高い。その中でもSCRAMBLESの数少ない女性クリエイターであるoniは特に多くの楽曲でEMPiREに多く関わっている。「ピアス」など人気曲のトラックデザインを務め、「I don’t cry anymore」や「FOR EXAMPLE??」などで数々の作曲も行っている。丁寧に音を重ねて繊細に表現するサウンドが魅力的なクリエイターでそれがEMPiREの方向性と相性が良いのだ。そして松隈の音楽性や魂を継承しつつも様々なクリエイターが参加しているため、聴けばWACKグループとわかる特徴を持ちつつも、他のグループとは違う魅力や個性が生まれている。

EMPiRE / ピアス [EMPiRE presents TWENTY FOUR HOUR PARTY PEOPLE @YOKOHAMA BAY HALL]

 メンバーの魅力についてもふれていきたい。ステージに並ぶ佇まいだけでも惹かれてしまう抜群のビジュアルを持つ反面、ライブでは他のWACKグループに負けない全力でエモーショナルなパフォーマンスをする。そのギャップも魅力的だ。特に〈お尻ペンペン〉という歌詞のフレーズが印象的な「Buttocks beat! beat!」では全力で叫び振り切ったパフォーマンスをライブで披露し盛り上げている様子は圧巻だ。クオリティの高い楽曲をしっかりと表現できるメンバーが揃っているからこそ、EMPiREの音楽は魅力的なのだ。

EMPiRE / Buttocks beat! beat! [THE EMPiRE STRiKES START!! at マイナビBLITZ赤坂]

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