Maica_n、新曲「Mind game」で鳴らした“多様な自分の在り方” 打ち破りたい“己の殻”と対峙するMVの見どころも

Maica_nが提示する“多様な自分の在り方”

 シンガーソングライターのMaica_nが12月6日、新曲「Mind game」を配信リリースした。この曲は、TVアニメ『デジモンアドベンチャー:』(フジテレビ系)のエンディングテーマとして書き下ろされたもの。ホーンセクションをフィーチャーしたスウィングジャズ風のイントロが印象的な、Maica_nの新境地を切り開くナンバーだ。

 Maica_nは佐賀県出身、徳島県阿南市育ちの20歳。ギタリストである父親の影響で、幼少期からThe BeatlesやThe Band、ダニー・ハサウェイ、エリック・クラプトンなど主に60~70年代の洋楽に触れており、現在はエド・シーランやジョン・メイヤーといったアーティストにインスパイアされながら楽曲制作を行っている。2019年6月には、初の全国流通盤『秘密』をリリース。The Shirellesのカバー「Baby It's You」を含むこのミニアルバムは、上述した洋楽アーティストのエッセンスをふんだんに取り入れたオーガニックなアンサンブルと、抑制の効いたクールで少しハスキーな歌声、その融合により生み出されるサウンドスケープは懐かしくもどこか新鮮。Spotifyが次世代アーティストを紹介するプログラム「Early Noise」に選出されるとすぐにコアな音楽ファンや評論家からは、松任谷由実や大貫妙子ら先人たちの名を引き合いに語られるなど、早くから注目を集めていた。

 今年5月にリリースされたメジャー1st EP『Unchained』は、前作のソングオリエンテッドな路線を引き継ぎつつも、アレンジにおいてはより振り幅の大きな作品に。アレンジャーにはgomesこと中込陽大が引き続き参加しているのに加え、斉藤和義や根岸孝旨(Dr.StrangeLove)、小田原豊(REBECCA)らが名を連ねており、80年代ニューウェイブを彷彿とさせるエフェクティブなギターサウンドや、歯切れの良いクラビネットを随所にちりばめるなど、いわゆるシティポップ~AOR的なイメージを更新するようなサウンドプロダクションが施されていたのが印象的で、そのロック的なアプローチは、個人的には空気公団やCyclesといったバンドを彷彿させもした。

Maica_n -「Unchain」Music Video

 2020年7月に配信リリースした「Love and Wash」は、コロナ禍での新しい生活スタイルを提唱する牛乳石鹸とのコラボ曲。また9月には、アニメ「モンスターストライク」シリーズ初のインタラクティブアニメ 『ハレルヤ - 運命の選択 -』の主題歌に起用された「Missing angel」をアコースティックバージョンとロックバージョンそれぞれのアレンジでリリースし(ゲームではストーリーのラスト10分の視聴者の選択によってそれぞれのバージョンを聴くことができる)、さらに11月配信の「メモ書き」(ドキュメンタリー映画『弁当の日『めんどくさい』は幸せへの近道』のエンディングテーマ)でもコロナ禍の日常を温かい眼差しで描写するなど、時代の流れをビビッドに捉えてみせた。

Maica n オリジナルソング「Love and wash」

 さて、そんなMaica_nによる新曲「Mind game」は、冒頭で述べたようにスウィングジャズをモチーフとしたゴージャスなアレンジ。デビュー時のレイドバックしたアレンジとも、EP『Unchained』でのエッジの効いたサウンドプロダクションとも全く違う、こちらの予想を心地よく裏切る内容だ。

 つんのめるようにシンコペーションするリズムセクションに乗って、グイグイとドライブするホーンのフレーズが冒頭から聴き手を一気に楽曲の世界観へと引きずり込む。Cマイナーのスリリングなイントロは、まるで煌びやかなダンスホールに迷い込んだかのよう。かと思えばAメロではCメジャーへと移調し、カノン進行の上で爽やかに弾けるメロディや歌い出しの〈あっという間に〉〈パッとチートで〉〈パッとビートで〉という「促音」で韻を踏んだ言葉の響きが、Maica_nのキュートな魅力を存分に引き出しているのが分かる。さらにBメロではE♭へと転調し、息つく間もなくサビではキーがFへと1音上昇。こうした目まぐるしいコード展開が、アップテンポなスウィングビートとともにカラフルでカオスな歌詞世界を盛り立てている。

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