Maica_n、熟練のメンバーと共に彩った初のワンマンライブ 自在なサウンドで魅せた“できることをやっていく”想い

Maica_nが表現する“できることをやっていく”想い

 シンガーソングライター Maica_nによる初のワンマンライブ『Maica_n~One 4 All』が12月4日、東京 Show Boatにて開催された。新型コロナウイルスの感染防止により、当日は入場客の検温やマスク着用の義務、フロアのおよそ3分の2を着席スタイルにして、ステージからオーディエンスまでの距離を2メートル以上空けるなどの対策が取られる中での開催となった。

 青い照明に照らされたステージにサポートメンバーの草刈浩司(Gt)、根岸孝旨(Ba)、小田原豊(Dr)、友成好宏(Key)が登場。おもむろに小田原がタイトなビートを刻み始めると、アコギを持ったMaica_nがカウベルを叩きながら後から現れ、まずは1曲目「Trio」からライブをスタートした。乾いたギターのリフとオルガンが絡み合うスワンプロック調のグルービーなアンサンブルの上で、Maica_nの真っ直ぐな声が響き渡る。

 初めて彼女のボーカルを聴いた時の驚きは、この日のライブでも全く変わらなかった。大貫妙子や松任谷由実ら、往年のシンガーソングライターを彷彿とさせるような抑制の効いたクールな歌声が、熟達したバンドメンバーたちによるアツい演奏と絶妙なコントラストを生み出しながら、唯一無二のサウンドスケープを生み出している。

 続く「Hanakoさん」は、8ビートでリズミカルに刻まれるピアノと、入り組んだシンコペーションのリズムが緩急自在に時間軸をコントロールするユニークなポップソングだ。メロディはソウルフルだがそれをエモーショナルには歌い上げず、一つひとつの言葉を確かめるように丁寧に歌うMaica_nのボーカルが、真水のように聴き手の心にスッと入り込んでいく。

「今日は東京で初めてのライブであり、ワンマンです。とにかく今日という記念すべき日に、こうして皆さんと過ごすことができて本当に嬉しく思います。いろいろと制限はあるのですが、思う存分楽しんでいってください」

 そう挨拶した後、ヘビーなピアノのバッキングと16ビートでバウンスするリズムが印象的な「秘密」では一転、スタンドマイクで体を揺らしながら歌うMaica_n。音の隙間を活かしたバンドアンサンブルが、息遣いまでメロディの一部にするような彼女の絶妙なアーティキュレーションを際立たせていく。トレイシー・ソーンやベン・ワットを彷彿とさせる、ボサノバスタイルのアコギ弾き語りから始まる「タバコと私」は、お互いの距離が“ゆっくりゆっくり離れていく”、やるせない想いを綴った歌詞が、少しかすれたMaica_nの歌声と相まって胸を締め付ける。

 中盤のMCでは、コロナ禍で集まってくれたファンに感謝の気持ちを述べつつ、「今のこの窮屈な環境を、少しでもよくするためには、誰かが何かをやってくれるのを待つだけじゃなくて。一人ひとりができることをやり、大きな力に変えていくしかないと思って、今回のタイトルを『Maica_n~One 4 All』にしました」と、ツアータイトルの由来を説明した。

「誰もが必ずできることといえば、手洗い、うがいはもちろん、少しでも誰かのことを思いやる気持ちを持つこと。それって、そんなに難しいことじゃないけど、だからこそ忘れやすいことだとも思っていて。もし忘れそうになった時は、この曲を思い出して、聴いて一緒に歌ってくれたら嬉しいです」

 そう紹介して披露したのは、牛乳石鹸とコラボした「Love and Wash」。コロナ禍での新しい生活スタイルを提唱する“手洗いソング”であり、The Young Rascalsの「Groovin’」や、オーティス・レディング「My Girl」を思わせるハッピーなリズム&ブルースに心が躍る。気づけば〈Wash wash wash wash your hands〉と繰り返されるメロディを、心の中でシンガロングしている自分がいた。

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