スガ シカオ、変わってしまった時代の中で見せた歌い手としての矜持 『Hitori Sugar Tour 2020 -セトリ再現ライブ-』レポート

スガ シカオが見せた、歌い手としての矜持

 中盤は、メロウなソウルナンバーの「発芽」や、「アストライド」に続けて母親への感謝の思いを歌に綴った「ヤグルトさんの唄」など、『ACOUSTIC SOUL 2』の収録曲が一つの軸となっていた。MCでは「普通のアルバムと違って、仲のいい友達にお便りをだすような、プライベート色の強いものを作りたかった」と、この作品をストリーミング配信にも流通にも乗せない形態を選んだ理由を語っていた。『THE LAST』、『労働なんかしないで 光合成だけで生きたい』と、あえてフックの強い表現、エグ味のある言葉、尖った音楽性を追求してきた彼。こうした方向性にはそこからの反動もあったようだ。

 後半はリズムマシンのビートに乗せた代表曲「黄金の月」から、ぐっとオーディエンスを巻き込み惹き込んでいくようなパフォーマンスだ。アップテンポな「コノユビトマレ」から、ジャケットを脱ぎ捨てて「19才」と続ける。ステージ前方に歩みを進め、身体全体を揺らしながらディストーションで歪ませたギターソロも披露。鋭いギターカッティングにシャウトを見せた「ストーリー」で最高潮の盛り上がりを作り出し、「今日のメンバーを紹介します。ギター、スガ シカオ! そしてボーカル、スガ シカオ!」と「Hitori Sugar」恒例のメンバー紹介を経て、大きく手を掲げてステージを降りた。

 手拍子に迎えられ再びステージに登場したスガ。アンコール1曲目に披露したのは、「俺の思い出や時間は、永久に誰かの心の中に、思い出と一緒に残ってくれるんじゃないかな」と語って歌った「深夜、国道沿いにて」だ。

 「早くこういう状況が去って、ライブハウスでバンドメンバーとファンクをやったり、ちっちゃいライブハウスで弾き語りをやったり、ギュウギュウになって楽しめる日が来ることを願ってます」と告げて、ラストには「アシンメトリー」を披露。アコースティックギターと歌だけのシンプルなパフォーマンスを見せ、ライブに幕をおろした。

 そして、ライブ終了後の12月10日には「プレミアムアーカイブ」の配信がスタートした。当日のライブのダイジェストと舞台裏に加え、過去の「Hitori Sugar」の映像や撮り下ろしインタビューから構成された特別な構成の映像だ。「有観客+生配信」という形も「アーカイブ視聴」という形も定着してきたが、会場にいた人もオンラインで視聴した人も その日のライブの裏側を“追体験”できるという意味では、この「プレミアムアーカイブ」はすごくいい試みだと思う。

「ライブのやり方もいろいろ変わってくるだろうし、配信というメディアが確立するから、そういうところも変わってくる。だけど、俺はシンガーソングライターだから、コロナ禍でレコーディングもライブもできないというときに、一番何をしなきゃいけないかというと、いい曲を書かないといけない」

 プレミアムアーカイブに収録された撮り下ろしインタビューで、スガはこう語っていた。MCでも「最近はスタジオに行ってギターを弾いて曲を作るようになったんです」と近況を告げていた。変わってしまった時代に対して、彼がどんな言葉を歌うのか。そこに向けて、期待が高まるようなライブでもあった。

■『Hitori Sugar Tour 2020 -セトリ再現ライブ- Supported by J-WAVE Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』プレミアムアーカイブ配信
2020年12月10日(木)12:00~12月31日(木)23:59
詳細はこちら

オフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる