BTS SUGAが変えていく“アイドルラッパー”の概念 今こそ必要とされる人々を鼓舞する歌声
BTSがついに米グラミー賞ノミネートという偉業を達成した。ビルボードTOP100で首位を獲得したことでも記憶に新しい英語詞シングル「Dynamite」が、最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス部門で候補に選ばれたのだ。韓国メディアによると、K-POPグループが米グラミー賞の主要部門にノミネートされたのは初めてのことだという。
また、彼らが奇跡を起こす瞬間を目撃することができた。BTSの公式Twitterは、V、JUNG KOOK、RM、JIMINの4人がノミネートされた瞬間に喜びを爆発させる姿を捉えた動画をアップ。小さな事務所から地道に一歩ずつ踏みしめながら、7人で掴んだ大きな夢。その歩みを知っている人であれば、誰もがこの快挙に誇らしく思うことだろう。努力を重ねた人たちが、正当に評価され、幸せになる世界であってほしい。そんな願いを、彼らの活躍に託したくなる。
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— 방탄소년단 (@BTS_twt) November 24, 2020
「俺のファンよ 堂々と顔を上げてろ」と、絞り出すように歌ったSUGAのラップを思い出した。BTSがこれほど多くの国や地域で評価された理由はそれはそれはたくさんあるけれど、そのうちの1つとして、彼らがアイドルでありながら若者の心に渦巻く“叫び“にも近い生々しい感情を率直に歌い続けてきたからではないだろうか。光がもたらす陰ごと発信するということ。次に進むために“痛み“から目をそらさずに発信していく勇気は、SUGAの反骨精神によるものが大きかったように思う。
今、SUGAは左肩の手術を受けてリハビリと休養のために活動を休止している。この左肩は、デビュー前に学費を稼ぐためにアルバイトをしていた際に事故で負傷した古傷。事務所にも告げず、1人で苦労を背負って生きてきたSUGA。メンバーには当時「階段から落ちた」と言ってまで、心配をかけまいと振る舞っていたそうだ。
そんな当時の思いをぶちまけるように歌ったのが、先ほど歌詞を引用したAgust D名義で作詞したソロ曲「The Last」。小学生からラップを書き始めたSUGAは、中学生で作詞をし、高校生で作曲を行ない、「ラップ界の神童」との呼び名がついたほど。
その才能をこの先どのように活かしていくのか注目が集まる中、BTSがヒップホップグループからアイドルグループへとコンセプトを変更した。ラッパーとして活躍するはずが、気づけばK-POPの中でもトップレベルでハードに踊るグループの一員になったことに、SUGA本人がテレビ番組で冗談交じりに不満を漏らしていたこともあった。
“アイドルラッパー“というのは、叩かれやすいものだ。なぜなら、アイドルもラッパーもどちらか1つでさえ極めるのは難しい。その上、偶像として創り上げられるアイドルと、精製されない想いを大胆に歌うラッパーとを両立させるなんてことは「不可能だ」と言ってしまうことのほうが容易だからだ。
だが、「見たことがない」と言い切ってしまう多くの声に、SUGAは「見てろ」と音楽を作り、歌い続けてきた。
「粉々になった肩で掴みとったデビュー」「俺の生きる場所はアイドル 否定はしない 幾度となく精神をえぐった苦悩」「俺の創作の根っこは恨みだ」「どこのどいつが俺ほどやれるってんだよ」
そう自分を奮い立たせて、お金がなくて何時間も歩いて通った日々も、人知れず事故の後遺症の痛みに耐えた時間も、全て創作への情熱に転化させてみせた。