BTS J-HOPE、“希望”をこめて届ける歌 メンバーやARMYからの愛をパフォーマンスに昇華させるムードメーカー
BTSが12月2日の『2020 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)第1夜に登場し、米・ビルボードシングルチャート“HOT100”1位に輝いた「Dynamite」を披露した。スーツに身を包み、美術館のようなセットを前に立った6人。肩を手術して療養中のSUGAは、残念ながらこの日のステージを共にすることはできなかったが、離れていても彼らは確かに繋がっている。背後に飾られている絵画が、7人で旅したリアリティ番組『In the SOOP』で描かれたものであることからも、その思いは十分に伝わってきた。
もちろん、この絵画に込められた特別な思いに胸を熱くできるARMY(ファン)についても同様だ。今は直接会うことは難しいけれど、想いはずっと繋がっていることを、このセットで伝えたかったのではないか。そんなBTSらしい、粋なはからいを感じさせるステージだった。
いつものように、すっと心に染み込むように歌い始めるJUNG KOOK。そこに飛び込んでくるのは弾けるようにエッジの効いたRMのラップだ。スイートなボーカルと、スパイシーなラップ。一見すると、相反するような歌声が絶妙なバランスで両立しているのが、BTSの楽曲だ。そして、その調和をとっているのが、次に歌うJ-HOPEと言っても過言ではない。
J-HOPEは、もともとボーカルとしてデビューを予定していたが、事務所の意向を受けてラッパーへと転身した異色の経歴を持つ。学生時代からダンスが得意で、オーディションでも2時間踊り続けたという伝説が語られるなど、才能豊かなJ-HOPE。事務所に入る前からラッパーとして活躍してきたRMやSUGAと肩を並べるラップを披露している姿を見れば、彼の万能さが見て取れる。
「ラップバトル」という言葉があるように、特定の誰かをディスったり、世の中への不満をぶちまけたりと、元来ラップは攻撃的なイメージが強い。だが、J-HOPEのラップは、そんな刺々しい印象はない。否定より肯定を好み、〈楽しんで 自信を持って〉と歌うのだ。
〈My name is My Life〉とは、ソロ曲「Hope World」での歌詞の一節だ。彼は自分の活動ネームに“HOPE”を入れた。これはギリシャ神話の「パンドラの箱を開けると底には“希望“だけが残った」に由来しているという。パンドラの箱は、災いをもたらすために触れてはいけないものの象徴とされている。
今、私たちが住む現代でいうパンドラの箱を開ける行為は、人々の本音を広めることかもしれない。悪口や強い言葉が一瞬にして広まる今、私たちはそうした言葉に傷つき、惑わされ、簡単に絶望する。だからこそ、J-HOPEは歌に“希望“を込めて届けようとしている。それが、世界を少しでも生きやすくする唯一のアクションだと信じて。