RADWIMPS、配信&会場どちらも沸かせた驚きの演出 メジャーデビュー15周年記念公演で示した“新しいライブのあり方”

RADWIMPS、横アリで見せた“驚きの演出”

 振り返れば、この日のライブ、“(演出上意味がない限りは)メンバーが移動しているところを映さない”という方針が徹底されており、これ以外にも「あれ、いつの間にこんなところに?」的なトリックがたくさんあった。これは配信だからこその見どころだが、逆に言うと、会場で観ていた人には、カメラに映らないところで何が行われているのかを直接観られる特権がある。それもそれで羨ましい。

 全体として、会場にいる人も配信で観ている人もちゃんと熱くなれるよう、綿密な計画とアイデアの下、実現したライブだと想像することができた。しかもこれがリアルタイムで行われていたのが凄まじい。生にはトラブルがつきものだが、そういったリスクを負ってでも、観客と同じ瞬間を共有することがこのバンドにとっては大事なのだろう。

 感染防止のガイドラインを守りながら会場に観客を入れるライブが少しずつ再開し始めている2020年11月現在、配信ライブは2つの種類に分けられる。ひとつは、会場に観客を入れない前提での配信ライブ。もうひとつは、会場に観客を入れつつ、併せて配信も行うライブ。今回のライブは後者にあたるが、その場合、(画面を通して見られることだけを想定すればよいライブと比べて)映像作品としての作り込みが浅くなるのが普通、と思っていた。このライブを観るまでは。

 映像作品としての完成度の高さと生ならではの質感を両立させたライブに、固定観念をひっくり返された気分だ。衝撃的な体験ではあったが、一方、RADWIMPSだから、と腑に落ちる部分もある。終盤のMCで野田はこう言った。「僕らはその時々の時代に反応しながら、人間に反応しながら、空気に反応しながら、これからもきっと音楽を作っていくと思います。たまには耳に痛いことも言うかもしれないけど、やさしい心を持って、この世界にまだない新しいメッセージを残したいなと思っています」と。音楽家としての扉をありったけ開きながら、新しいメッセージを発明してきたこのバンドは、同じように、この時代における新しいライブのあり方を発明しているところなのかもしれない。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

■セットリスト
『RADWIMPS 15th Anniversary Special Concert』
2020年11月23日(月・祝)@横浜アリーナ
1 タユタ
2 グランドエスケープ
3 DARMA GRAND PRIX
4 新世界
5 シュプレヒコール
6 パーフェクトベイビー
7 NEVER EVER ENDER
8 おしゃかしゃま 
9 G行為
10 お風呂あがりの
11 やどかり
12 棒人間
13 螢
14 告白
15 トレモロ
16 有心論
17 ます。
18 バグッバイ
EN-1 おあいこ
EN-2 いいんですか?
EN-3 スパークル
EN-4 DADA 

RADWIMPS 公式HP

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