RADWIMPS、配信&会場どちらも沸かせた驚きの演出 メジャーデビュー15周年記念公演で示した“新しいライブのあり方”

RADWIMPS、横アリで見せた“驚きの演出”

 RADWIMPSがメジャーデビュー15周年を記念したライブ『15th Anniversary Special Concert』を横浜アリーナで開催した。2020年はRADWIMPSにとって記念すべき年だったが、残念ながら、初のドーム公演を含む全国ツアーは延期、ワールドツアーは中止せざるを得ない状況に。そして2019年8月以来となる今回のライブでは、ガイドラインに則った数の観客を会場に入れ、併せて配信も行った。

 野田洋次郎(Vo/Gt/Pf)、桑原彰(Gt)、武田祐介(Ba)にサポートドラマーの森瑞希、繪野匡史が加わり、ツインドラムの5人編成で今回のライブに臨んだRADWIMPS。繪野はパーカッションも兼ねているため、セットが要塞のような佇まいだ。PA、照明、映像など、舞台演出はワールドツアーをともに回る予定だったスタッフで固めたほか、“総合芸術のようなライブにしたい”との想いから総合監督として映像ディレクターの谷聰志もブッキング。ライブの後半では、吉開菜央率いる総勢50名弱のダンサーが舞台に華を添えた。ちなみに、ゲストがいるという事前告知があったが、2日目にあたる11月23日公演では、ハナレグミの永積崇が登場。2015年に野田が提供した曲「おあいこ」を共に奏でた。

 以下、23日公演を振り返る。なお、筆者は配信で観ていたため、その目線からの言及になることをご了承いただきたい。

 1曲目は『アルトコロニーの定理』から「タユタ」という意外な選曲。メンバーの足元にスモークが焚かれるなか、ひっそりと歌う野田をピンスポットが照らし、幻想的な幕開けだ。一旦暗転を挟んでから始まったのは、原曲では三浦透子が歌っている「グランドエスケープ」。途中の映像演出で、メンバーの立っているステージの床が全面LEDであることが判明。さらにその後、カメラアングルが引きになり、バンドを囲むように観客がいることが判明する。なお、観客はアリーナ/スタンド席からステージを見下ろす形になるため、LED上の映像も確認できる。

 メンバーのいる空間は普段のステージよりも広く、それぞれが縦横無尽に動き回りながら演奏している。「パーフェクトベイビー」では、野田が歌いながらセグウェイに似た二輪車で移動。さすがに驚かされたが、もしかしたら「今日なりの楽しみ方を存分に発揮して楽しんでください」というMCでの発言を自ら実践していたのかもしれない。制限されていることはたくさんあるが、それさえしっかり守れれば、楽しみ方はもっと自由でいいはず。そんなふうに伝えてくれている気がした。

 前半のハイライトは「おしゃかしゃま」。この日は全体的にライブアレンジが多い印象だったが、この曲では、桑原vs武田→森vs繪野→桑原&繪野vs武田&森と、ソロ(ソリ)バトルが次々に展開された。間に立つ野田が両陣営をぐいぐい煽りまくるなか、桑原が某ゲームの効果音をギターで再現しながらジャンプすると、武田が壮絶なスラップで返し……といった具合に、偶発的なコミュニケーションが発生していく。そんななか、スタッフに「(観客の姿が見えるよう)外周もっと照らしてくださいよ!」と求める野田。特設サイトのコメントにもある通り、彼らにとっては“お客さんの歓声や歌声、熱気が全部込みで「僕らのライブ」”なのだ。

野田洋次郎
桑原彰
武田祐介
森瑞希
繪野匡史
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野田洋次郎
桑原彰
武田祐介
森瑞希
繪野匡史
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 「G行為」でダンサーが登場。怪しげな動きをするダンサーとサイケデリックな色味の映像がこの曲の禍々しさを引き立てる。一転、インスト曲「花火大会」をバックにダンサーが舞うと、その間にメンバーが移動していたのか、3人はいつの間にかアンティーク調の部屋を思わせる空間にいる。ここでは「お風呂あがりの」「やどかり」と、日常の温かみを感じさせる2曲をアコースティックアレンジで披露。特に「お風呂あがりの」では、桑原がマンドリンを、武田がウッドベースを演奏した。そこだけ別撮りかと思ってしまうくらい別空間に感じられるようなセットだったが、この部屋も会場内に作られたセットだと言っていた通り、「やどかり」を演奏しながら歩みを進める3人が辿り着いたのは、最初にいたLEDの床の上。同じ会場内で、全部リアルタイムでやっていることに驚かされた。

 繊細で傷つきやすい人、心のやさしい人が生き続けられる世界であってほしい、と野田が語ったあとに演奏されたのは「棒人間」。野田を囲うようにダンサーが立っているが、光に浮かぶ影とダンサーの実体の動きがズレている。影が軽やかに踊る一方、実体はその場に崩れ落ち……といった具合に、心の内側と外側が乖離している様が(影絵に見せかけた)映像演出によって表現された。続く「螢」では、光の球がふわふわと浮遊する。これ以降他の曲でも登場した光の球、最初はCGだと思ったが、よく見ると、リアルな照明装置であることが分かる。CGを重ねて表現した方が明らかに簡単そうなことを、それでもフィジカルで表現してみせるところに、演出スタッフ陣のプライドを感じた。続く「告白」での演出も発想の賜物。野田がキーボードを弾き語りする1番では彼以外を映さず、2番で初めて引きの画を見せることで、野田が楽器ごと上空にせり上がっていたことに気づかせない仕組みだ。“観客はカメラに映されたところしか見ることができない”という配信ならではの特性を活かし、驚きを演出した。

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