きゃりーぱみゅぱみゅが魅せる、緻密に設計された“ホラー仕様”なステージ演出 オンラインハロウィンライブをレポート
お色直しタイムを経て「インベーダーインベーダー」でステージに再登場したきゃりーは、鮮やかな赤と黒のフラメンコドレス風の衣装でラフレシア(食虫植物)に扮していた。中田ヤスタカ独特のメッセージ性が光る「もんだいガール」、きゃりー流の無機的な歌声の魅力が炸裂する「原宿いやほい」のヒットナンバー連打は圧巻だ。
軽くMCをして大広間に戻り、猫と二人で「のりことのりお」。続く「ちゃみ ちゃみ ちゃーみん」は1番をドレッサーに向かって歌い、2番では立ち上がって双子と3人で踊る。この曲はいちばんミュージカルプレイっぽかった。「キミに100パーセント」から、明るく照らされたステージに移って「最&高」、またまた大広間に戻って本編ラストはファミリー全員で「Crazy PartyNight〜ぱんぷきんの逆襲〜」だった。
アンコールは「かまいたち」。三たび登場したきゃりーはTシャツに黒のパニエっぽいスカート、白のソックスに黒のエナメルシューズというラフないでたちだ。双子+父+執事を従えてのライブ初披露で、一夜限りのオンラインライブは幕を閉じた。
何が起こっているかを書き留め、記憶に残すのに必死の90分だった。二つのステージを頻繁に往来し、目まぐるしく入れ替わるダンサー(ファミリー)たちのフォーメーションも複雑で、大きなテーブルもいつの間にかセットされ、知らない間に搬出される。カットも大胆に切り替わる。緻密に設計され、入念にリハーサルされたショーであることは明らかだった。仕事抜きで楽しみたかったな......とこぼしたいほどである。
色彩と明暗でストーリーを作る照明も見事だったし、きゃりーが座るドレッサー、母が演奏するピアノ、ダリ風の時計の壁画、大広間の絨毯にシャンデリアと、隅々まで作り込まれた小道具がふとしたタイミングで目に入るのはオンラインライブならでは。すべてが観客の視界内のステージ上で展開する生のコンサートが演劇だとすれば、これは映画やドラマを見ているのに近い。
分割されて段違いになるステージ、演者が昇降する階段、ろうそくや鏡ごしのカットを使うなど、高低や奥行きをうまく見せた立体的な画作りもすばらしかった。映像配信でしか見せられないものを高いクオリティで作り上げた制作チームと、その中心でキレキレの動きを見せ続けた演者たち、中でもその中心でキラキラと輝きながら持ち前の歌の魅力を発揮しまくったきゃりーに、ひたすら感服するしかない出来だった。
■高岡洋詞(たかおか ひろし)
フリー編集者/ライター。主なフィールドは音楽で、CDジャーナル、ミュージック・マガジン、ナタリーほかに寄稿。好きな料理は水炊き。
http://www.tapiocahiroshi.com