『仮病』インタビュー
ザ・コインロッカーズ 宇都宮未来&絹本夏海&船井美玖&森ふた葉インタビュー 体制変更からの挑戦の日々と13人で叶えたい目標
ザ・コインロッカーズが、最新シングル『仮病』を配信リリースした。ドラマ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』のエンディングテーマを担当した同曲は、“心が病気になるほど追い込まれるくらいなら、辛いこ苦しいことから仮病を使って逃げてもいい”という肯定のメッセージを伝えるミディアムナンバー。コイロカらしい爽快感はありながらも、大人の表情も覗かせる新機軸の楽曲となった。
時勢で活動が制限される中、EP/シングルの配信リリースやTikTokアルバム『群青ミラージュ』の制作、YouTube番組、配信ライブなど、様々な形で認知を拡大する彼女たち。13人体制での活動がスタートして約半年経った今、新しい挑戦にも積極的にトライする中でグループやメンバーに対する気持ち、演奏面にはどんな変化と成長があるのだろうか。宇都宮未来、絹本夏海、船井美玖、森ふた葉に話を聞いた(編集部)。
バンドのための歌い方も考えられるようなった(宇都宮)
ーーザ・コインロッカーズが13人体制で再スタートを切ってから、約半年経ちました。この期間を通じて、皆さんどんな手応えを感じていますか?
森ふた葉(以下、森):新体制になってから「ガールズバンドアイドル」と打ち出したことで、バンドのいいところもアイドルのいいところも取れるから、武器が増えたと思うんです。そういう意味では、ほかのバンドさんと比べて以前よりも差別化がしやすくなったのかなと思います。
宇都宮未来(以下、宇都宮):13人になって最初は慣れないことや戸惑う部分もあったんですけど、半年経ってようやくどんどん自分の役割や13人でやるべきことが明確になってきて。手応えと言われるとまだちょっと難しいなと感じることもたくさんあるんですけど、今はとにかく楽しいですね。
ーーその自分の役割というのは、具体的にどういうことでしょう?
宇都宮:以前はボーカルが何人もいたので、その中で自分が埋もれないために必死だったんですけど、今は「どうやったらバンドを引き立たせられる?」とか、バンドのための自分の歌い方も少しは考えられるようなったかなと。それに、人数が13人になったことで1人ひとりに対する責任感もどっと増えたと思います。
船井美玖(以下、船井):確かに、39人いたときよりも自分らしさを出しやすくなったし、13人ってことで個々の個性が伝わりやすくなったのかな。もちろん39人いたときの良さもあるけど、あの頃は「私を見て!」といくら主張しても、楽器が上手とか歌が上手とか、何か飛び抜けてすごいものがないとなかなか注目してもらえなくて。
ーー確かに、以前はザ・コインロッカーズの名のもとに5つのグループが存在していたので、その可能性が今よりも低かったですし。
船井:まずは「どのグループを好きになろうか?」から始まると思うので、個人にまで目が向きにくかったかもしれませんし。それを考えると、今は1人ひとり光るものを見つけてもらいやすいのかなと思います。
絹本夏海(以下、絹本):私の場合は楽器初心者だったので、最初の頃はみんなについていくことだけに必死で。でも、この春から13人体制になってから楽器のパートも絞られて、「自分から動いていかなくちゃいけない」とか「どう行動したら自分の良さが伝わるかな?」とか、以前よりも考えるようになったので、責任感が全然違います。そこは自分の中でもすごく変わった気がします。
最近は目を見合わせたら「ここで切る」とわかるように(船井)
ーー今はドラム3人、ギター3人など特殊な編成によって生まれる個性もあるのかなと思います。
森:音源だとちょっとわかりにくいかもしれないですけど、例えばYouTubeで配信された360°ライブを観てもらうとわかりやすいのかな。ドラムだったらサビの前に入れるフィルが三者三様で、私だったら大まかなフィルをするけど、なるちゃん(成澤愛実)は細かめのフィルをするみたいな。あと、13人同時に演奏すると音の厚みが出るし、「いくぞ!」みたいな圧も強まっていて楽しいです。
宇都宮:確かにそうだね。360°ライブの場合、13人で円を作って演奏するから、どこを観てもメンバーがいるので安心するし。
船井:そういうバンド、ほかにいないですよね。
ーーギターもそれぞれ役割分担もあるのかなと思いますが。
絹本:ギターソロを担当することの多いHANNAとか、バッキングを重要視されている(下島)輝星とか、それぞれ役割がしっかりありつつ、3人が合わさったときはより良い音を作ろうとみんなで協力し合っています。あと、弾き方も3人それぞれ全然違っていて、私はおとなしめに弾くんですけど、輝星だったら頭振って暴れたり(笑)、HANNAは対照的で余裕な感じで弾くし。そういうふうに、音でも視覚でも楽しめると思います。
ーープレイヤーによってはそれぞれの癖や個性が演奏に出ますものね。ボーカルの場合はどうですか? 13人体制になってからはダブルボーカルで作品を重ねていますが。
宇都宮:最初は(船井と)まったく違うグループでやっていたし、しかも印象が真逆みたいなグループだったんですね。でも、一番仲が良かった2人で、一緒にやりたいねってことはよく話していたので、やっとできると決まって「もし合わなかったらどうしよう?」と思ったりもしたんですけど、意外と相性も良くて。2人で歌っていると心強さもあって、常に楽しいですね。
船井: 2人で同時に歌うとなると、ブレスのポイントとか伸ばす長さとか細かいところが合わないと気になるんですよ。そこが合っていないと、ギターでいうバッキングがズレてると感じるぐらい気になっちゃうので、最初の「僕はしあわせなのか?」のときはそこについてすごく話し合って。でも、最近は目を見合わせたら「ここで切る」とわかるようになりました。もともと仲が良かったからできることかもしれないけど、やっぱり作品を重ねていくたびに息がより合うようになって。声質も本当に全然違うし、曲に合う雰囲気とかも違うと思うんですけど、それでも2人で歌うとハマる……こっち側の意見ですけど(笑)。
宇都宮:ハマってます!(笑)
船井:(笑)。ハマっているなと思うので、改めて言うのは恥ずかしいけど、未来でよかったなと思います。
宇都宮:ありがとう(笑)。ユニゾンのときはお互いが合わせにいくからひとつになるんですけど、AメロBメロはだいたい1人ずつ歌うので、そこで個性がバーンと出て。すごくバランスがいいなと思います。