ザ・コインロッカーズが語る、汗と涙で掴み取ったデビューの切符「みんなが互いに支え合っていた」
秋元康とワーナーミュージックが手を取り、“楽曲毎の世界観に合わせてメンバーを選抜する”という斬新な企画から生まれたガールズバンド、ザ・コインロッカーズ。“夢は弾いて叶えろ”をキーワードに、国籍や楽器ができる、できないを問わず、全国1万人の応募者から選ばれた総勢39人から成るこのバンドの第1弾シングル『憂鬱な空が好きなんだ』が6月19日にリリースとなる。現在放送中の日本テレビ系・土曜ドラマ『俺のスカート、どこいった?』の主題歌でもある表題曲の選抜メンバーに抜擢されたのは、松本璃奈(Vo)、 HANNA(E.Gt)、 絹本夏海(E.Gt)、手塚愛乃(E.Gt/Cho)、Emily(A.Gt/Cho)、鏡味のぞみ(Ba)、有働優菜(Key)、田村愛美鈴(Key)、森ふた葉(Dr)の9人だ。
メンバー決定から、怒涛のGW合宿を経て5月末には初のライブハウスでのSHOWCASE LIVEを行なったザ・コインロッカーズ。ここからさらに12月23日に決定しているZepp Tokyoでのワンマンライブ完売に向けて全150本に及ぶ全国ツアーがスタートする。バンドの成り立ちもユニークだが、この9人のなかでもそれぞれ好きな音楽や楽器歴等もさまざまで、ライブハウスに行くのすらもはじめてというメンバーも少なくない。それぞれのプロフィールやオーディションの裏話をはじめ、この9人ならではのバンドのカラー、1stシングル『憂鬱な空が好きなんだ』についての話を聞いた。(吉羽さおり)【最終ページに読者プレゼント有り】
オーディエンスの熱量を感じた初めてのライブハウス
ーー下北沢GARAGEでのSHOWCASE LIVEを見ましたが、初のライブハウスでのステージはいかがでしたか。
松本璃奈(以下、松本):ライブハウスということで、お客さんとの距離がすごく近い上に、初めてファンの方の前での演奏だったので。何もかも初めてづくしで、どうなるんやろう? って感じでした。でも、ステージと距離が近いこともあって、お客さんのあたたかさが伝わって。声援をくださったり、コブシを上げてくださったり、熱くて、楽しい時間だったなと思います。
絹本夏海(以下、絹本):まずデビュー前なのに、わたしたちを知ってライブに来ていただいたこと自体が嬉しくて。ステージから見て感極まってしまいました。
ーーショーケースでは3バンドが出演して、2曲(「憂鬱な空が好きなんだ」「月はどこに行った?」)は同じ曲を演奏するというのはなかなかないことで、それだけにバンド同士で緊張感もありそうです。
松本:同じ曲だけど、バンドによっての色も違っていて。お互いにそんなにライバル心を抱いているわけではないんですけど、それはそれぞれの特徴があるからこそなのかなと思いますね。
森ふた葉(以下、森):どのバンドも楽しんでほしいという気持ちが一番にありますね。
絹本:楽屋でもみんな、それぞれのバンドを「頑張って!」って送り出すみたいな。
森:終わったら「お疲れー!」っていう感じで迎え入れてました。
ーーそれでは、改めてみなさんのプロフィールやザ・コインロッカーズがどんなバンドかというのをお伺いしていきたいと思います。今回応募したきっかけはまずどんな理由からだったんですか。
有働優菜(以下、有働):わたしは、もともと小さい頃からピアノをやっていたんですけど。高校で軽音楽部に入って。ひとりで演奏するのではなくて、バンドでみんなで合わせる楽しさを知ったときに、このオーディションを見つけたんです。ガールズバンドのオーディションには楽器が上手い人や音楽が好きな人が集まると思っていたので、同じ思いを持った人が集まって演奏したら、きっと楽しいだろうなと思って応募しました。
ーーオーディションではどんなことを披露したんですか。
有働:わたしはピアノの弾き語りをしました。……といっても、歌はあまり得意じゃないんですけど、「明日への扉」(I WiSH)を歌ったんです。だからすごく緊張してしまって。スタッフの方から「マイクの位置をちゃんと調整してね」って言われていたんですが、調整せずに演奏をはじめてしまうという(笑)。
ーー歌は必須だったんですか。
有働:そういう決まりはなかったんですけど、チャレンジしてみようと思って。もともと歌いながら弾いたことがなかったから、どうなるんだろうと思いましたし、正直受かるとは思っていなくて。『GirlsAward』(Rakuten GirlsAward 2019 SPRING/SUMMER)やSHOWCASE LIVEでライブをするようになって、ようやく受かったんだなって実感してきました。
ーーHANNAさんはどうですか。
HANNA:わたしはもともと、自分で学校の仲間と一緒にいくつかバンドを組んでいて、リードギターを担当していたんです。それで、これを活かせたらいいなという気持ちを込めて応募しました。わたしも受からないだろうなという気持ちもあったので、オーディションは全力で楽しんでやろうと思って。
ーー思い切りやったというオーディションではどんな曲を披露したんですか。
HANNA:オーディションのときは、THE ORAL CIGARETTESの「狂乱Hey Kids!!」をやったんです。オーディションは見てもらえる時間が最初の15秒くらいなんです。だから、選曲にすごく迷って。一発で見せられるものがいいと思って、頭から速弾きの曲を選んだんです。最初からかましてやろうって(笑)。それで、本番でも何も考えずに審査員の方々を煽っていって、全力を出し切ったことで、今に至るという(笑)。演奏中に審査員の方々に向かって指を指す振り付けを入れたんですけど、今だにメンバーからも、そのときの真似をされたりしてます。
手塚愛乃(以下、手塚):わたしも軽音部でギター&ボーカルをしていました。みんなが進路が決まっていくなか、大学受験をせずにオーディションを受けたんです。わたしはHANNAと違って、すごく緊張をしていて。あの緊張感のなかでHANNAのようにパフォーマンスするのは本当にすごいと思うし、わたしはギターを弾きながら歌を歌ったんですけど、ピックを落としちゃって、そのまま爪で弾くくらい震えが止まらなかったんです。オーディションではSCANDALの「瞬間センチメンタル」を弾きました。
ーーその選曲は、ガールズバンドということを意識してですか。
手塚:はい、してました(笑)。あとは、自分の声は高音に特徴があると自覚があったので、なるべく高いキーで歌う曲がいいなと思って選びました。HANNAも言っていたように、ちょっとの時間で自分をアピールしないといけないので。選曲については結構考えました。
ーーEmilyさんはどうですか。
Emily:わたしも緊張感がすごかったです。手も震えていたんですけど、手汗が止まらなくて、ギターを弾くのにツルツル滑ってしまって全然弾けなくて。みんなは、少しの時間で自分をアピールしなきゃいけないと言っていたんですけど、自分はそういうことも考えずに、自分がそのときにいちばん好きで、いちばん弾ける曲を披露したんです。アッシャー・エンジェルの「Being Around You」という曲でした(ディズニーチャンネルドラマ『アンディ・マック』作中キャラクターによる劇中歌)。
ーー絹本さんは楽器未経験でしたね。
絹本:受けた動機としては、わたしはすごく暗かったので、自分を変えたい一心でしたね。これに受かってなかったら、普通に社会人になっていたと思うので、このオーディションに人生をかけたという感じでした。オーディションでは「魂のルフラン」(高橋洋子)を歌ったんですけども、それを選んだ理由としては、自分は声が低くて、その低い声も嫌いだったんです。その嫌いな面も歌声に変えられたらいいなという思いはありました。そこを見せつけられたかなとは思ってます。そのときは楽器が弾けなかったんです。けど、なにか弾けるものあるかなと思ったら、オカリナがあって。二次審査では、オカリナを出して、吹いたらウケたんです(笑)。持っていってよかったなと思って、今でもお守りにしてます。
ーーオーディション時はそのオカリナを披露して、バンドの楽器ができなかったということですが。ザ・コインロッカーズではギターを担当することになって、どう思いましたか。
絹本:最初はボーカルで希望していたんですけど。バンドだけど楽器を持たずボーカルだけっていうのはどうなんだろうとずっと思っていて。わたしも何かしら楽器は弾きたいなと思っていたので、オーディションでどんな楽器が弾きたいですかって聞かれたとき、思い浮かんだのがギターケースを背負っているバンドマンの姿だったんです。わたしもギターを背負う憧れがあったし、練習して弾けるようになりたいと思ったので、エレキギターを希望しました。ギターが家に届いてからはすごく嬉しくて、でもどこに置いていいかわからないから、とりあえず一晩は一緒にベッドで過ごしました(笑)。
手塚:最初の頃、紙にギターの弦を描いて、「コードを教えて?」って言われたんです。
絹本:(笑)。最初のスキルチェックで、ギターがどのくらい弾けるのかスタッフさんの前で披露しなきゃいけなかったんですけど、まだそのときギターが届いてなかったんです。遅れをとっていられないと思って、紙をギターのネックくらいに折り曲げて竿に見立てて、弦を6本描いて、それでコードを押さえる練習をしていたんです。それでわからないところがあったら、愛乃に連絡して。
手塚:すごい頑張り屋なんだなって思いました。
絹本:1週間後くらいにギターが届いたんですけど、実際に触ってみるとまた全然ちがって。話がちがう! って思いましたけど(笑)。