トラックメイカーユニット ODOLAが語る、“楽曲の区画を崩した”音作りへの意識 影響を受けたアーティストも明かす

トラックメイカーユニット ODOLAが語る、“楽曲の区画を崩した”音作りへの意識 影響を受けたアーティストも明かす

 ヒップホップ・バンドBullsxxtの元メンバーであり、近年はそれぞれ演奏家/トラックメイカーとしても注目を集めている沼澤成毅とPam。この二人が2014年頃から音楽活動の母体としてきたユニット=ODOLAが、ついに1stアルバム『Grooovin’ Blue』を完成させた。Kuro(TAMTAM)へのトラック提供や様々なリミックスワーク、あるいは制作やライブのサポートなどを通じて、彼らの卓越した演奏力とエッジーなトラックメイクはかねてから話題となっていただけに、これはまさに待望の一枚。今回はそのリリースにあてて、沼澤とPamにインタビューを行った。それぞれの音楽的変遷とODOLA結成までの経緯を伺いつつ、『Grooovin’ Blue』の全容に迫ってみたい。(渡辺裕也)

ローファイヒップホップみたいには聴き流せないようにしたいなと

ーー聞くところによると、お二人は大学生の頃から一緒に演奏されていたようですね。しかも、当時からすでにODOLAとして活動されていたんだとか。

沼澤成毅(以下、沼澤):そうですね。大学のジャズ研究会でセッションしたりしていくなかで、一緒に宅録するようになったのが始まりでした。

ーーそれまでのお二人は各々どのような音楽活動をされてきたのですか?

沼澤:大元を辿ると、僕は高校の吹奏楽部でオーボエをやっていたので、始まりはクラシックですね。いま思うと、自分が現代音楽に惹かれたルーツもそこにあるのかなと。そこから山下達郎さんとか、いわゆるミドルオブザロードと呼ばれているような往年のポップスもよく聴くようになって。浪人していた時期は実家の山形から仙台によく通って、DJ Mitsu the Beatsさんやgrooveman Spotさんといった仙台のトラックメイカーをチェックしたり、そこからネタを辿ってディスコ・ファンクとかのCDをよく手にしてました。

沼澤成毅
沼澤成毅

ーー鍵盤の演奏はいつ頃から?

沼澤:ピアノを本格的に弾き始めたのは、大学に入ってからです。それまでピアノはちょこっと触ってきた程度でほとんど弾けなかったんですけど、じつは佐藤博さんもピアノを弾き始めた時期がわりと遅かった、なんて話を聞いたのもあって、なんとか自分も頑張れないかなと思ったんです。

Pam:僕は小さい頃からクラシックピアノをやっていたんですけど、中学生の頃になるとなにか違う楽器がやりたくなって、なぜかベースを手に取るっていう(笑)。それからはバンドを組むわけでもなく、ずっと一人でベースを続けていました。

ーー当時のPamさんはどんなベースを弾いてたんですか?

Pam:それこそ教則本に載っているフレーズを弾いたり、ロックやジャズの名曲をひたすら練習してみたりとか。で、そんな自分を見かねた親から「札幌に通ってジャズのセッションにでも参加してみたら?」と言われたことがきっかけで、それで高校からジャズを始めたんです。

ーーshowmoreの井上惇志さんとは、その当時からの知り合いなんだとか?

Pam:そうなんです。札幌でのセッションを通じて、showmoreの井上さんやShunské G & The Peasの山田丈造さんといった北海道出身のミュージシャンと知り合えたのはすごく大きかったですね。他にもマーカス・ミラーのクリニックに参加したり、バークリー音楽大学の先生に手ほどきを受けたり、いま思えば当時はよい経験ばかりさせてもらってました。ただ、そういうすごい人たちのセッションばかり見てしまったせいか、当時高校生の自分はちょっと自信を失ってしまって。なんというか、もう誰かと一緒に音楽をやるのは嫌だなと(笑)。そこで始めたのがトラックメイクだったんです。

ーーなぜそこでトラックメイクに向かったんですか?

Pam:プレイヤーとしては音楽やりたくないな、とも考えていた時にちょうど浪人してしまって、いろんな音楽を片っ端からTSUTAYAでレンタルして聴いてみていくなかで、サンプリングという手法を知って。そうしたら「もうこれ、自分で弾く必要ないじゃん」みたいな気持ちになっちゃったんですよね。

Pam
Pam

ーーPamさんにそう思わせたサンプリングミュージックとは、具体的にはなんだったんでしょうか?

Pam:やっぱり90年代のヒップホップとトリップホップですね。なかでも大きかったのがMassive Attack『Blue Lines』。僕はあのアルバムが中学生の頃から大好きだったので、後にそれがサンプリングで作られた音楽だと知った時は、本当にびっくりしたんです。他にも<STONES THROW>界隈とかネイティヴ・タン周辺には、かなり影響を受けましたね。

Massive Attack『Blue Lines』

ーーたしかにそのあたりはODOLAの音楽性にも直接的な影響がありそうですね。沼澤さんは、大学のころはどんなバンドをやっていたんですか?

沼澤:僕はジャムバンドをやってました。じつは今回のジャケットをお願いしてるARIKAさんはその頃のバンドメンバーでもあるんですけど、当時の僕はそのバンド活動がだんだん楽しめなくなってしまって。そんな僕を気にかけてくれて、「気が乗らないなら無理しないほうがいいよ」と声をかけてくれたのがPamくんだったんです。それから彼と曲作りをするようになって、それがODOLAやBullsxxtにつながっていきました。

ーーそれから数年を経て完成したのが、今回の1stアルバムだと。

沼澤:そうなんです。こうして1枚目を出すまで、気づいたら随分と時間がかかってしまいました(笑)。

Pam:作り始めてから完成まで、実質3年くらい?

沼澤:そうだね。ただ、これだけ制作に時間をかけたおかげで、自分たちが作りたいものというか、サウンドの一貫性みたいなものになんとなく気づけたのはよかったなと思ってて。

ーー今作ではトレモロやフェードイン、リヴァースといったエフェクトがとても効果的に使われていますよね。こうした時空をぼやかすような音響が今作の特徴のひとつだと感じたのですが、いかがでしょうか?

沼澤: (Pamに向かって)ちょっと映画的というか、時間の流れみたいなものは意識してたよね? かといって、ただ淡々としているわけでもないというか。

Pam:うん。なんというか、ローファイヒップホップみたいには聴き流せないようにしたいなと(笑)。それよりもアール・スウェットシャツとか、スタンディング・オン・ザ・コーナーとか、ああいう流れを踏襲したいという気持ちがありました。

Pam&沼澤成毅

ーーアール・スウェットシャツの近作って、どれも本当に素っ気ないというか、「これは本当に曲として成立してるの?」みたいな短めのトラックがいくつも並んでいて、それが妙にそそるんですよね。たしかに『Grooovin’ Blue』はそれと通じるものを感じます。

Pam:そう、まさに「これって曲なの?」みたいな感じなんですよね。でも、アール・スウェットシャツの作品を聴いてるうちに「ああ、作品ってこれでいいんだな」と思えたっていうか。それでなんとなく気持ちが軽くなって、それまで作りためてきた30秒くらいのデモなんかも、このままひとつの作品としてまとめちゃおうと。なんていうか、楽曲の区画を崩していきたいと思ったんですよね。いわゆるJ-POP的なものは特に。


アール・スウェットシャツ『Some Rap Songs』

ーーコズミックな音色とフィールドレコーディングが共存しているところも、今作のユニークなところだと思いました。宇宙と日常が滲みあってるようなムードというか。

Pam:「Intro」のコズミックな展開は、完全に沼澤の好みですね(笑)。「Moment of days」のフィールドレコーディングは、近所の公園で録ったやつです。

沼澤:あのフィールドレコーディングはそれこそコロナ前に録ったものなんですよ。だから、「Moment of days」が完成した当初はなんか不思議な感じでしたね。「ああ、この時とずいぶん変わっちゃったな..….」って。

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