マシン・ガン・ケリー、ヤングブラッド、トラヴィス・スコット……「ロック回帰」&「新境地への意欲」感じる必聴の5曲
“Utopia”へようこそ
Travis Scott feat. Young Thug & M.I.A.「FRANCHISE」
カニエ・ウェストなど様々なアーティストの楽曲への参加、オンラインゲーム『フォートナイト』上でのバーチャルライブ、映画『TENET テネット』への楽曲提供、ついにはマクドナルドとのコラボと、2020年のポップカルチャーのどの方向を見てもトラヴィス・スコットがいる。それは、アルバム『ASTROWORLD』の成功の証明でもあるわけだが、そのワーカホリックな活動が示す通り、彼は決して同じ場所に身を置き続ける人間ではない。
「FRANCHISE」は前述のマクドナルドとのコラボを踏まえた新曲だが、同時にヒップホップグループ・Dem Franchize Boyzへのリスペクトを捧げた楽曲でもある。同グループの代表曲のタイトルとして用いられ、ヒップホップカルチャーの象徴でもある“White Tee(白Tシャツ)”を身に纏ったトラヴィスは、自身の圧倒的な成功をボースティングしながら〈俺たちが“Utopia”の扉を開いたら、それはまるでズートピアさ(When we open gates up at Utopia, It's like Zootopia.)〉と、ディズニー映画を引用しながら来る新作『Utopia』へ案内する。自身のルーツを改めて提示した上で、彼は新たな場所へと向かおうとしているようだ。
多くの才能が注目する、「新たな語り手」による祈り
Mustafa「Air Forces」
現在23歳、カナダはトロント出身のMustafaは、2014年にスポークンワードのスタイルで活動を開始し、翌年にはドレイクから賛辞を受け、2018年にはザ・ウィークエンドやカミラ・カベロへの楽曲提供を行うなど、様々な形で注目を集めていた存在である。そんなMustafaが、今年いよいよ一人のアーティスト/シンガーとして活動をスタートさせた。本楽曲では共同プロデューサーにJamie xxを招いており、今後フランク・オーシャンやザ・ウィークエンドといった存在へと成長するであろうポテンシャルを持つアーティストで、この楽曲はそれを証明するものでもある。
Jamie xxらしい丸みのある、それでいて身体の内へと侵食してくるような音色のトラックで歌われるのは、銃と暴力に支配された夜の中で、エアフォースを履いた仲間を失った時のこと。周りの人々を守りたいと願いながら、なぜ神は我々を生かすのか? 何のために運命は存在するのか? と切実に問うMustafaの歌声と、彼の母親が戦争を経験した時に歌われていたというスーダンの聖歌が重なる。長い年月を経ても変わらない苦しみと、目まぐるしく変わっていく地域のギャップの狭間で、彼は祈り続けている。
■ノイ村
普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。 シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
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Twitter : @neu_mura