Sexy Zoneが創り出す“新たなアイドルの概念” ダイバーシティの重要性訴える、マリウス葉らの言動
ここ最近、テレビや新聞、雑誌などのメディアで、Sexy Zoneマリウス葉くんの発言や行動が注目されることが増えてきました。それも、カルチャーギャップや独特の日本語表現を面白おかしく扱うものではなく、彼自身の発言や行動の根底にある信念、そしてその源泉となる知性に関心を寄せられることが多くなったように思います。(ここでは親しみを込めて、僕のいつもの呼称で記載します)
マリウスの発言や行動の礎となるキーワードに、ダイバーシティ(多様性)があると考えています。性別、国籍、宗教、性的指向などの違いから生まれるさまざまな価値観に対して、その多様性を認めて積極的に活用することで、組織や社会を成長させる考え方です。
マリウスのこうした先進的な姿勢は、メディアにおける発言にもしばしば見られ、よりよい社会について考える対談連載「One step at a time 一歩ずつ進もう」(『SPUR』集英社)など、具体的な仕事にも繋がっているように見受けられます。
マリウスの価値観を語る上で欠かせない、あるエピソードがあります。2019年に放送された音楽特別番組『THE MUSIC DAY』(日本テレビ系)の中で、Sexy Zoneのリハーサル風景が映し出された際、マリウスが着ていたTシャツに「lol patriarchy」というメッセージが書かれており、ファンの間で話題となりました。patriarchyは「家父長制」、lolはスラングで日本語で言えば「ウケる」とか「ワロタ」というニュアンスの言葉。つまり、家父長制という古典的で支配的な価値観に対して、マリウスが明確に否定的な意見を持っていることが、映像を通して明らかになったのでした。
一方で、マリウス自身が身を置くアイドルという世界は、どちらかと言うと古典的な性役割(ジェンダーロール)と階層社会(ヒエラルキー)の元で醸成されました。特にジャニーズのアイドルは、50年以上に渡って、男性的な魅力で多くの女性ファンを熱狂させることによって拡大し、また明確な上下関係の中で組織を統制してきました。このような背景から、ジャニーズは男性優位の古典的な価値観によって成立してきた、という見方もできます。
そしてSexy Zoneというグループもまた、「顔面偏差値が高い」「顔面人間国宝」とファンから称されるように、彼らの整ったビジュアルが、時としてルッキズム(外見の魅力で人の優劣を評価する差別的な考え方)を助長している例も散見されます。これらの点から、ジャニーズ、そしてSexy Zoneという存在は、本人の意思に関わらず、ダイバーシティという考えとは相反する要素を少なからず含んでいる、と言えます。
つまり、マリウスが抱える信念の矛先は、自らの存在を否定しかねません。しかし、マリウスの発信するメッセージにそういった矛盾を感じたことが、少なくとも僕にはありません。その理由は、マリウス自身の持つ魅力と多様性にあります。さらにそれは、Sexy Zoneというグループ自体にも当てはまります。