chelmico×長谷川白紙 特別対談 ルーツ音楽、ファッション、お笑い……自身を構成する“好きなモノ”を語り合う

「ごはんだよ」仮タイトルが「ディエス・イレ(怒りの日)」だった理由

ーーちなみにアルバム『maze』を作っている時はどんな音楽を聴いてましたか?

Mamiko:なんだろう……Awichを聴いてたかな。あとはMoonChildとか。

Rachel:私はあんまり音楽は聴いていなくて、それより本をたくさん読んでいました。それこそ「ごはんだよ」に出てくる〈なつのひかりに現れたやどかり〉というラインは、江國香織さんの小説『なつのひかり』のオマージュなんですよ。ある日、部屋にヤドカリが現れて、追いかけるけど捕まえられないだけの話なんですけど、それが夢の中にいるような、記憶の中を歩いているような感じで気持ち悪くて(笑)。「ごはんだよ」の世界観とリンクしているなと思ったんですよね。

長谷川:へえ!

Rachel:そういえば、白紙さんから送られてきた「ごはんだよ」の仮トラックのタイトルが「ディエス・イレ(怒りの日)」だったのは何故ですか?

長谷川:あれは、グレゴリオ聖歌「ディエス・イレ」の旋律を要所要所で引用しているからです。最後に出てくるやつがもろにそうなんですけど。

Rachel:あ、そこが一番好きなんですよ!

長谷川:「ディエス・イレ」はキリスト教における終末思想の一つですが、グレゴリオ聖歌「ディエス・イレ」はレクイエム(死者を弔う聖歌)としてミサで歌われてきたものなんですね。「ごはんだよ」ではこの旋律を、根源的な恐怖を呼び起こすモチーフとして引用していて、そこにコードではなくCのメジャースケールを全部鳴らそうとしている。つまり「恐怖」が他の要素で覆い隠されて分からなくなっているという状況を、音楽的な構造で表現してみたわけなんです。

Mamiko:はー! そんなことをやっていたんだ。

Rachel:仮タイトル、ずっと気になってたから聞けて良かった。「ディエス・イレ」、ちゃんと聴いたことなかったから聴いてみます。

ーーところで白紙さんとMamikoさんって、「お笑い」好きという共通点があるんですよね?

Mamiko:え、「お笑い」好きなんですか?

長谷川:はい。この間のインタビューで、自分の言語的な感覚は「お笑い」からの影響がかなり大きいという話をしたんです。

Mamiko:えー、早く言ってよ(笑)。

長谷川:最近はダイヤモンドという2人組が好きで。

Mamiko:あははは。結構ちゃんと追ってるんだね。

長谷川:神様クラブの周(AMANE)さんから「ダイヤモンドはヤバいよ?」と教えてもらって(笑)、そこから好きになりました。単独公演とかにも行ってるんです。あとはサツマカワRPGとか。

Mamiko:すごい。結構パンチがある人たちが好きなんですね。バラエティ番組を観て、というよりはネタから入るパターンですか?

長谷川:そうです。家にテレビがないので、テレビでどんなことをやっているかは全く知らないんですよね。

Mamiko:私もテレビがなくて、最近はあまりネタをしっかり追えてなかったから観てみます。

ーーちなみにMamikoさんが最近ハマってる「お笑い」は?

Mamiko:最近は、マセキ芸能社の銀兵衛が好きですね。是非、白紙さんに観て欲しい。

長谷川:観てみます!

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