赤い公園は音楽とともに輝かしい未来を信じて生きているーーODD Foot Works Pecoriも登場した配信ライブレポ

赤い公園、配信ライブレポ

 2020年、夏。無念の全国ツアーの中止を受け止め、過去に経験のない状況の中で音楽と向き合いながら、それでも凛とした姿勢で前だけを見つめている赤い公園の現在地を提示する単独の配信ライブ。それを開催するならば、立つべき舞台は一つしかなかった。バンドの出自であり今も親愛なるホームグラウンドである立川BABELのステージで、彼女たちーー石野理子(Vo)、津野米咲(Gt)、藤本ひかり(Ba)、歌川菜穂(Dr)、はとても情熱的で潔いライブを見せてくれた。MCを一切挟まない全16曲を、約1時間にわたり濃密なまま駆け抜けた。2018年の5月に石野が加入して以降、赤い公園の音楽力が誇る底知れなさはますます増幅、拡張している。そんなことを強く感じさせてくれるステージでもあった。

 配信スタート同時に映し出された立川の商店街。オーディエンスの視点を代替したカメラがビルの扉を開ける。階段を降りて、BABELのエントランスに入ると、カメラはドリンクカウンターへ。ドリンクチケットと引き換えにBABELの店長からメロンソーダを受け取ると、開演を待つフロアに歩を進める。ステージに設置された幕には赤い公園のバンドロゴが映し出されている。そして、幕が上がった。

 仄暗いステージにそれぞれの立ち位置についた4人のシルエットが浮かんでいる。1曲目は「ソナチネ」。4人はそれぞれBABELのTシャツを身にまとっている。言うまでもなく、それはこのハコへの愛情表現だ。静謐な始まりだった。赤い公園は今年の4月に2年8カ月ぶりのオリジナルアルバムであり、あるいは2枚目の1stアルバムであり、事実上のセルフタイトル作とも捉えることができる『THE PARK』をリリースした。「ソナチネ」はその中盤に位置する楽曲だ。初めてこの曲を聴いたとき、いつかの学校の音楽室や体育館に響いていた合唱曲の残像が叙情的なポップスとして蘇ったような感触を覚えたが、BABELのステージで丁寧なアンサンブルと歌唱によって紡がれる様相もまた特別だった。

津野米咲(Gt)

 一転して、津野の小気味いいギターカッティングが先導しながら2曲目の「Mutant」に移行する。変則的に跳ねるリズム隊のプレイは頼もしく、石野は自由なモーションで身体を動かしながら歌を躍動させる。その後も「絶対的な関係」からの「絶対零度」と、ポップとオルタナティブのチャンネルを秒単位で切り替え、あるいはポップとオルタナティブのダイナミズムを渾然一体とさせる赤い公園のバンドのミュージックの力学をまざまざと現出させていく。

 現時点では正式音源がリリースされていない「Beautiful」は石野のはつらつとしていてキュートなボーカルと重心をしっかり支えるリズム隊のコントラストが気持ちいい。津野がギターから鍵盤にチェンジした「KILT OF MANTRA」、「交信」、「Yo-Ho」の流れは、赤い公園のクリエイティビティをずっと支えているピュアな音楽愛ーーそれこそ初めて楽器を手にして音を鳴らしたときの手と耳の感覚を思い出すようなーーが色とりどりに彩られたサウンドとメロディによって編まれていった。

 再び津野がギターを持ち、シャープかつソリッドなリフから疾走させていった「消えない」ではステージの柵に足をかけて猛々しく歌う石野の姿が印象的だった。さらにはトライバルなニュアンスを帯びた歌川のタム回しを皮切りに生々しい緊張感をたたえたグルーヴを転がしていく「ジャンキー」で石野は、まるで譲れない意思を持った操り人形が徐々に衝動を解放していくような動きを見せながら、どこまでも目と耳を離せないその歌の求心力を体現してみせた。

石野理子(Vo)
石野理子(Vo)

 豊潤な歌謡性を誇るメロディとリリックが、夏の夜の情景と恋にまつわる情感を描く「最後の花」と「夜の公園」を経て、ライブは終盤へ。

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