赤い公園、石野理子が持つ新ボーカリストとしての求心力 「凛々爛々」はバンドの決定打となるか
2018年5月4日『VIVA LA ROCK 2018』のステージに赤い公園の新ボーカリスト、石野理子が初登場した。「物事が変わるのは一瞬だ」と言ったのは、どこかのプロレスラーだったか。いや、石野のあまりにフレッシュで眩しい光輝を放つパフォーマンスを目の当たりにして、そしてステージで躍動する彼女に触発されるようにしてそのいびつな情熱と色気に富んだプレイを解放する、赤い公園という場所を死守してきた3人を見つめながら、まさに「バンドが生まれ変わるのも一瞬だ」と思った。
もちろん、石野が赤い公園の新しいボーカリストに決定するまでに津野米咲(Gt/Cho)、藤本ひかり(Ba)、歌川菜穂(Dr/Cho)は不安な日々を送っていた時期があったのも想像に難くない。果たして、津野が創造するどこまでも一筋縄ではいかない楽曲を漂白することなく体現できるボーカリストはいるのか? それは女性なのか? 男性なのか? 日本人なのか? もしかして外国人なのか? いや、そもそもスリーピースバンドとして生きていく選択肢もあるのではないか。いちリスナーの筆者でさえ千思万考したのだから、メンバーは途方に暮れたこともあっただろう。しかし、3人はタフな姿勢を見せてくれた。2018年1月4日にホームグラウンドである立川BABELにて恒例の自主企画イベントを開催し、3人体制のライブを披露。しかも、演奏した20曲はオール新曲、3人が入れ代わり立ち代わりで歌い、ときにパートさえ入れ替わるという振り切れっぷり。というか、狂っていて最高だなと思ったし、新曲群は可能性しか秘めていない原石そのものだった。3人は同年2月にも下北沢GARAGEにて開催されたイベントに出演。この2本のライブを通して彼女たちが強く実感したのは新曲のポテンシャルとそれにふさわしい新ボーカリストの必要性だったのではないだろうか。
そして3人は、当時はまだ広島県在住だった石野理子と出会った。現在18歳の石野はアイドルネッサンスのメンバーとして2014年にデビュー。筆者はアイドルシーンに明るくないが、当初から石野の歌唱力の高さは定評があったという。音域の広さやピッチの安定感、声量など歌唱力の高さを示すものさしは複合的であり、実際に石野はその多くを満たしているが、しかし彼女が赤い公園のステージのど真ん中に立ったときに「これだ!」と思えたのはもっと別の理由がある。新奇なポップネスとロックイズムがせめぎあう、また歌詞の中の登場人物が人生の喜怒哀楽を音楽とともに謳歌している、真にオルタナティブなポップミュージックであり、バンドミュージックとして息づく赤い公園の楽曲を背負うに十分な“主人公感”を、石野が持っていたということ。それが何より重要なポイントだった。