パノラマパナマタウン、新宿ロフトでの無観客ライブをレポート スリリングなロックンロールに垣間見えた“タフな成長”

パノパナ、無観客ライブで見せたタフな成長

 この日、1曲だけ岩渕がハンドマイクで何もないステージに上がってラップしたのが「パノラマパナマタウンのテーマ」。メジャーデビューに際して、トレンドとか同調とか知ったこっちゃありませんと明確にオピニオンを発したこの曲だが、この日はヤバい人、面白い人、いろんな人がいる新宿LOFTーーメジャーデビューを発表した場でもあるーーへの愛も込められていた印象だ。さらにバンドで初めて作った曲である「ロールプレイング」、そして一気に新曲「SO YOUNG」へ。この曲の入り前、岩渕は「ずっと青くていいと思います。あらゆる人間がSO YOUNG」とカメラ目線で言い、突き抜けるようなコードが鳴った時、The Clashが「I Fought the Low」を鳴らした時もこんな感じだったんじゃないかと直感してしまった。何々パンクと形容詞がいるパンクじゃなく、ロックンロールとしてのパンク。時代を飲み込みつつ、枠からは逸脱してきたこれまでのパノパナは良くも悪しくも音楽を語ってきた。しかしこの日披露された新曲は理屈を超えて、それぞれの楽器の音と4人のアンサンブルで勝っていた。

タノアキヒコ

 岩渕は「この半年のスパンで、どうやってライブをしていたのかわからないっていう次元すら超えてしまった」と言い、「世間ではライブを不要不急扱いするけれども、自分にとっては要だし急だ」と言った。それはライブの最中で、まさにライブが必要だったことに気付き発された言葉だからこそ重かった。

 終盤は「これまでで最速なんでは?」とコメントが並んだ「MOMO」で浪越がやおら上裸になり、続く「めちゃめちゃ生きてる」のイントロかつ歌い出しも4人でバッシバシに決める。岩渕もギターを弾いて、一つ一つのリフやリズムチェンジを磨いてきたことが伝わる。エンディングでドラムに集まり互いを見据えて演奏している頃には、タフになった今のパノパナしかもう覚えていない気すらした。ラストに置いた「On the Road」は彼らにしては捻りがない曲だと思っていたけれど、ストレートな8ビートが今日この時、てらいなく似合う。新曲群に顕著だったが、今だからこそ一周まわって、ある種オーセンティックで、しかもスリリングなロックをパノラマパナマタウンは成立させうるのではないかーー再始動というお祝いムードを凌駕する演奏がそこにあった。

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

■セットリスト
パノラマパナマタウン『PPT Online Live「On the Road」』
2020年8月16日(日)Streaming+
1.SHINKAICHI
2.Top of the Head
3.フカンショウ
4.C'mon Future
5.いい趣味してるね
6.Dogs
7.ラプチャー
8.Rodeo
9.パノラマパナマタウンのテーマ
10.ロールプレイング
11.SO YOUNG
12.エイリアン
13.俺ism
14.MOMO
15.めちゃめちゃ生きてる
16.On the Road

■アーカイブ情報
『PPT Online Live「On the Road」』
※8月23日(日)23:59までアーカイブ配信あり

<チケット価格>
・視聴チケット:¥2,000(税込)
・特典付きサポートチケット:¥2,500(税込)
チケット販売期間:7月14日(火)21:30~8月23日(日)21:00
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