indigo la End、Official髭男dism、MY FIRST STORY……相次ぐインストアルバムリリース 各作品の聴きどころは?

 indigo la Endが7月24日、インストゥルメンタルベストアルバム『藍楽無声』を配信リリースした。今年2020年に結成10周年を迎えたindigo la End。バンド初のインストアルバムにあたる同作は、メンバーの確かな演奏力を基盤とした、ドラマティックなアンサンブルを堪能できる作品となった。

indigo la End『藍楽無声』

 拍にジャストで嵌めるか、後ノリにするか、それとも食ったリズムにするか。曲に合う表現を適宜選択し、自在に操ることによって、リズム隊が作り出す生きたグルーヴ。木の葉や雫が落ちる様子を表す副詞に“はらはらと”という言葉があるが、まさにそう言い表したくなるようなギターのメロディ。バンドのアンサンブルには常に余白があり、その静けさに寂しさを感じる。余白があるのは、聴き手に行間を読ませるためだろう。歌謡曲由来の歌メロや、歌詞がなくとも、物語的な音楽を鳴らすバンドなのだと改めて思わせられる。

indigo la End『藍楽無声』

 なお、このアルバムは、ストリーミング配信サービスで人気の曲を中心に選曲したそう(参照)。そのため、本来はシングルカップリング曲の「夏夜のマジック」が1曲目に配置されているなど、収録曲は変則的な並びになっていて、特に前半にはバラード曲が多く収録されている。“indigo la Endといえばバラード”というイメージを持っている人には、プログレ/ポストロック的要素がとりわけ強い「悲しくなる前に」や「はにかんでしまった夏」、「ラッパーの涙」、「砂に紛れて」辺りも聴いてみてほしい。

 indigo la Endの他にも、インストアルバムをリリースしたバンドはいる。例えば、Official髭男dismは6月26日に『Traveler -Instrumentals-』を配信リリースした。2019年10月にリリースされた1stアルバム『Traveler』のインストバージョンにあたるアルバムだ。演奏力の高さに定評があるバンドだけに、ボーカルのない状態でも聴き応えは抜群。寄せ木細工のように緻密に計算されたアンサンブルに唸らせられたり、メンバーのロックなプレイに熱い気持ちにさせられたり、今まで気づけなかったセカンドメロディを発見し驚かされたりする。

 現在、ポニーキャニオン内の新レーベル<IRORI Records>に所属しているOfficial髭男dism。同レーベルは「昨今、音楽を楽しむ環境が身近になったことで、急速に流行が変化する音楽シーンの中、IRORI Recordsは才能豊かなアーティストと共に、色褪せない音楽を追求し、音楽が持つ本質を的確に多くのリスナーへ発信するために設立した音楽レーベルです」との理念を掲げているほか(参照)、SNSアカウントで、アルバム制作に参加したエンジニアミュージシャンを紹介している。こういった動きからは、録音技術や演奏技術――もっと言うと、そういった技術を持った職人たちにもしっかりスポットを当てたいというチームの意思が読み取れる。マスにも知られている彼らのようなバンドが、明確な意思を持ってそれを行う意義は大きい。また、スコアの発売を積極的に行うなど、未来の才能を後押しすることも考えているようだ。

Official髭男dism『Traveler -Instrumentals-』

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