MUCC ミヤ、シド 明希、キズ 来夢……プロデュースや配信ライブなど、ソロ活動で生み出す新たな価値

　最後に触れたいのは、7月19日に単独公演『迫害』を配信したキズのボーカル来夢。配信ライブが新たな常識となり音響機材や演出にこだわるアーティストが増えていく中、彼は野外へ出てアコギ一本での弾き語りを行なった。朝日が昇る青空の下、背後には東京タワーや高層ビルが立ち並び、耳をすませば鳥の囀りや電車の音が聴こえるという新鮮な環境の中で、「十九」「黒い雨」「銃声」、そして未発表曲「願イ」の4曲を披露した。公演中、来夢の顔はほとんど見えず、東京という街に訴えかけるように力強く歌う横顔だけが映し出されている。

　キズの楽曲が放つ闇は、暗いライブハウスの中が最も輝く場所であり、日の光の下など似合わないと思い込んでいた筆者にとって、この公演はかなり衝撃的だった。アーカイブを観ればわかるのだが、まるで映画のワンシーンのような美しい映像に仕上がっており、楽曲の世界観とも絶妙にマッチしている。来夢の歌唱力、そしてキズの楽曲がもつエモーショナルな要素が実現させた、新しいパフォーマンスの形だと感じた。

　ライブが自由にできない状況の中、今後も規模の大小を問わず、個人活動を行なうバンドマンが増えていくことだろう。彼らが生み出す新たな価値が、安心してライブが開催できる状況になった時に、バンドの血肉となることを期待していきたい。

■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。