シド マオが紡ぐ“言葉”の求心力 ファンを魅了してきた歌詞の特徴から詩人デビューまでを辿る

 シドのマオが詩人としてデビューしたのは、とても自然な流れだったと思う。彼の紡ぐ言葉には、人を惹きつける魅力がいくつも備わっているからだ。17年間、シドのマオとして彼が書き続けた歌詞は、多くの人の心を捉えて離さない。

シド『delete』

 今回マオが自身の詩を発表する舞台に選んだのは、「note」。noteは、文章やイラスト、写真などの創作物を手軽に投稿できるサービスで、プロ、アマチュア問わず多くのクリエイターが集まる場所だ。マオの詩においても、そのまま文字に起こすだけではなく、イメージに合ったデザイン画像に載せて公開されるため、まるで歌詞カードを読んでいるような感覚が味わえる。2020年6月15日時点で公開されているのは、合計3作品。「潤む」「ぬくもり」は、マオがファンに向けて書いた詩で、ストレートなわかりやすい言葉で構成されており、今までマオが綴ってきた歌詞にはない新鮮さが感じられた。逆に、昔の恋人の美しい思い出に囚われた男の詩である「バタートースト」は、歌詞の書き方とかなり近しいものを感じた。

 というのも、マオの歌詞は恋愛をテーマにしたものが多い。しかし、甘いラブソングは少なく、過去の恋人への未練を歌ったものや、恋人同士が別れるシーンを切り取ったものなど、苦く切ない歌詞がほとんどだ。男女の繊細な心の揺らぎが伝わってくる歌詞には毎度唸らされてしまうのだが、彼はストレートな書き方をあまりしない。その場の情景やふとした仕草など、周囲の情報を丁寧に描くことで、核になる部分を想像させるのだ。特に秀逸だと感じたのは、2008年にリリースされた「モノクロのキス」のカップリング曲「season」。夜の海を一人訪れた女性を主人公にしたこの曲は、〈2段目の私は珊瑚礁〉、〈逆流を許されない立ち位置に「流れ着いた」だけ〉と、海にまつわる言葉をキーワードに捩じれた大人の恋愛模様が描かれていく。〈七分丈にまくった ジーンズの裾から 伝う水温〉、〈始まり胸躍る春の日も 見つけて傷ついた夏の夜も 迷う秋も わからなくて逃げた冬も〉といった歌詞からは、この女性が今どんな状況にいるのか、今に至るまでにどんな時間を過ごしてきたのかを想像させられるだろう。

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