『CYNHN Streaming LIVE「Ordinary Blue」』
CYNHN、2部構成の配信ライブに感じた成長ぶり 映像演出とアコースティック、それぞれ用いて伝えた“歌”を聴いて
2020年7月25日にCYNHNが開催した無観客配信ライブ『CYNHN Streaming LIVE「Ordinary Blue」』は、彼女たちの成長ぶりを驚くほど伝えてくるものだった。
2部構成で、第1部は映像演出を使ったライブ、第2部は初のアコースティックバンドを迎えてのライブ。「Ordinary Blue -AM2:00」と題された第1部は、14時に開演。メンバーが次々とフュージョンスクリーン上に映しだされていき、ライブは幕を開けた。スクリーンを使った演出は過去のワンマンライブでも行われてきたが、今回の映像演出はさらに凝り、配信ライブに独自の価値を与えていた。
ライブは、2020年9月9日にリリースされるシングル曲「ごく平凡な青は、」でスタート。MVはすでに公開されているが、ライブでパフォーマンスが披露されるのは初めてだ。スクリーンにはグラフィックや歌詞が投影されていき、リアルタイムで演出が施されていく。その一方、メンバーの力強い歌声は、ライブができない期間も歌い続けていたであろうことを感じさせた。そんな「ごく平凡な青は、」は、新しいアンセムの登場を予感させる。
また、空間芸術のような演出上、メンバーのアップよりも、ステージ全体を写す引きの映像が多く、過剰な動きをしないカメラワークも視聴体験として快適だった。他の配信ライブを見ていても、カメラのスイッチングを的確に行うことは非常にハードルが高い。結果的にそうしたストレスからかなり解放されることにもなった。
内面を描きだすような楽曲が多いCYNHNにおいて、「ラルゴ」もまた複雑なニュアンスに満ちている楽曲だ。配信だからこそ、各メンバーのボーカルの表現にもじっくり対峙することができた。「解けない界面論」のMVでは、メンバーの綾瀬志希がアニメーションのイラストを手がけていたが、ライブの映像にそれが同期されていくのも新鮮だった。
「雨色ホログラム」「絶交郷愁」と続き、ロックナンバーの「wire」へ。フロアにファンがいなくても、メンバーの熱量で乗りきっていく。そして、2019年の1stアルバム『タブラチュア』の最後を飾っていた難曲「Pray for Blue」が、平然とライブの中盤に置かれていたのには驚いた。この楽曲もまた、未明の「青」を過ごすときの内面の葛藤を描いていく。
深夜の街の映像を挟んで、スクリーン上で扉が開くと、そこにCYNHNがいる。そんな演出から「2時のパレード」へ。2020年に5人体制となり、その再スタートを飾ったロックナンバー「水生」では、一瞬のユニゾンでも一切ブレないボーカルに感動した。さらに、CYNHNが“ヴォーカルユニット”と名乗るようになった大きな転換点となった2018年の「はりぼて」へと続き、第1部の本編が終了した。
Twitterで公募された、ファンが撮影した「青」の写真が流されてからアンコールへ。再び歌われた「ごく平凡な青は、」では、メンバーも笑顔も見せるなど、よりリラックスした雰囲気に。同じ公演なのに別バージョンを聴いているかのような変化だった。