高橋美穂の「ライブシーン狙い撃ち」第17回
Mrs. GREEN APPLE、フレデリック、あいみょん……横浜アリーナで見せた三者三様のパフォーマンス
今月も数々のライブ映像作品がリリースされているが、特に注目したのはMrs. GREEN APPLE、フレデリック、あいみょんの三作品。2010年代半ばに初めてのリリースを果たした三組が、奇しくも近しい時期に同じ会場=横浜アリーナでライブを行った。その模様を収めた映像作品が、立て続けにリリースされたのだ。それぞれの映像作品には、三者三様ともいえるパフォーマンスが刻まれている。そこからは、単に集客が見込めるようになったから、キャリアを重ねたから、節目だから、というだけではなく、ここは自己を確立したからこそ立てるステージなのだ、ということがひしひしと伝わってきた。
まずは7月8日にリリースされたMrs. GREEN APPLEの『EDEN no SONO Live at YOKOHAMA ARENA 2019.12.08』。彼らにとって初めてのアリーナツアー『エデンの園』の中から、2019年12月8日に行われた横浜アリーナの模様を収録した映像作品だ。彼らは「アリーナ規模で単独公演を行えるアーティストになる」という明確な目標を立てて突き進んできたバンドであり、このツアーは「フェーズ1の集大成」と銘打って行われた。そのすべてが納得できるライブのクオリティが、画面越しにも伝わってくる。
ライブを通して綿密に練られた物語性(特に、たくさんのダンサーが現れるシアトリカルな「Viking」の次に、大森元貴がひとりで弾き語る「クダリ」がくるという振れ幅を敢えて作るというセンスには脱帽)。様々なジャンルを行き来する曲調にぴったりとシンクロする演出。そんな華麗な演出の中心にそびえ立つことができる5人のプレイヤビリティ。思わず「完璧だ……」とつぶやかずにはいられないエンターテインメント空間だった。しかし、目を凝らすと、それを形にするために、メンバー一人ひとりが努力してきたことも見えてくる。
先日、フェーズ1完結と活動休止の報告をした彼ら。この映像作品を観れば、ここまで彼らがバンドを自分たちの手でハンドリングしてきたこと、それはこれからも続くこと、そういう意味において必要な活動休止であることがわかるはずだ。
続いてはフレデリックが7月15日にリリースした『FREDERHYTHM ARENA 2020〜終わらないMUSIC〜at YOKOHAMA ARENA』。2019年4月からはじまったロングツアー『FREDERHYTHM TOUR 2019-2020』を締めくくったライブの模様が収められており、彼らにとっては初めての映像作品となる。それだけでも、集大成的作品であることがうかがえるが、観てみると、確かに彼らの音楽の芯にあるものやライブに対する姿勢といった「フレデリックとは何ぞや?」というものを知ることができる。
まず様々な場面から見えてくるのは、彼らがリスナーと「共にある」という意識だ。ここまで共に来たし、共にこの日をはじめるんだ、という気持ちが映し出されていたオープニング。そしてクセになるループ感や語感を駆使した楽曲で、その思いを踊らせ、歌わせながら心身に届けて、会場いっぱいに共鳴を生んでいく様子が広がっていた。きっと彼らの姿勢はオーディエンスにも伝わっているのだろう。「NEON PICNIC」で会場中にスマホのライトがきらめいた光景は、その象徴のようだった。もとにある素朴な思いを、古今東西の音楽を昇華したセンスで、アリーナ級のスケールに膨らませることができる、そんな彼らのスキルを感じた。本編ラストの「イマジネーション」の絶唱と熱演、そしてアンコールの「終わらないMUSIC」で歌われていることは、こんな状況の今こそ、より響くものがあると思う。