カネコアヤノ、オンラインライブで届ける熱量とメッセージ スペースシャワーによる「LIVEWIRE」幕開けへの期待

 スペースシャワーによる有料課金型ライブ配信プラットフォーム「LIVEWIRE」がスタートする。

 今も新型コロナウイルス感染症の拡大により、アーティスト、スタッフ、ライブハウスといった音楽シーンが危機的状況に立たされている。「LIVEWIRE」は、この事態を打開すべく設立された。音楽の未来を創る新たな選択肢、興行、収入源、コンテンツの形として新しい時代を切り開くサービスプラットフォームの開発に取り組んでいく。

 一言で例えるならば「LIVEWIRE」は、オンライン上のライブスペースだ。スペースシャワーがキュレーションしたアーティストのライブ配信に、物販販売システムを併設、今後はアジア圏のユーザーをターゲットにした海外展開も予定している。

 オープニングシリーズとなる第1弾に発表されたのはカネコアヤノ、Suchmos、銀杏BOYZ、くるり、中村佳穂、PUNPEE。7月5日にその幕開けを飾るのがカネコだ。

 カネコは2019年9月にリリースしたアルバム『燦々』の全国ツアーとして、2020年1月から3月の間に全国11カ所でライブを行う予定だったが石川と沖縄公演が延期に。キャリア最大規模となる大阪市中央公会堂、中野サンプラザで開催予定だった『ワンマンショー2020春』、さらに出演予定だった数々のイベントも延期を余儀なくされた。

 2月26日、政府からのイベントの中止、延期の要請発表を受けて、翌日の石川公演の延期が決定。カネコは「悔しいので明日19時からインスタライブします」とTwitterに綴り、ライブ配信を通して来られなかったファンに歌声を届けた。3月15日にはYouTube Liveを通して、バンド編成のパフォーマンスを生配信している。

 「明日からも音楽を止めない、辞めない 信じてる」ーーそうTwitterに宣言したのは、『ワンマンショー』の延期が決まった翌日の4月9日。ラジオ番組『SONAR MUSIC』(J-WAVE)の火曜ナビゲーターを務めるカネコは、番組の意思に賛同し、弾き語りという形で音楽を止めることをしなかった。

 カネコアヤノの魅力は、歌の中に生活の匂いがすることだ。例えば、『燦々』の1曲目「花ひらくまで」のラストは〈咲くのに時間がかかってる/チューリップ眺めて/温かいお茶をすするのです〉と和やかな描写で締めくくられる。KID FRESINOとの共作「Cats & Dogs feat. カネコアヤノ」でカネコが歌うパートは、〈洗濯物が揺れる様を見たいよ/今日は絶対に頑張らない/パジャマのままでいさせてよね〉と怠惰な1日の始まりを想像させるリリックだ。

 彼女のシンプルかつストレートな歌詞から浮かび上がってくるのは、日々の生活の中にあるささやかな幸せ。このコロナ禍により、なんでもない毎日が特別な暮らしの中にあったのだと誰もが痛感したことだろう。少しずつ元の日常を取り戻しつつ今、人間は悲しいほどにその実感を忘れていくが、カネコの音楽はこの先の未来に進んでいく勇気を与えてくれる。

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