シド、8年越し横浜アリーナ公演で見せたファンとの“絆” 新曲も披露した15周年グランドファイナル
本来であればシドにとって2度目の横浜アリーナ公演になるはずだった。華々しくメジャーデビューを果たし、2010年に行われたさいたまスーパーアリーナ公演、東京ドーム公演を経て、さらなる飛躍を期待されていた2011年の3月19日、20日に予定されていた『dead stock TOUR 2011』の横浜アリーナ2デイズは東日本大震災の影響で中止となった。あの悲しい記憶から8年、シドにとって15周年のグランドファイナルの場所として選ばれたのは横浜アリーナ。そして日付は奇しくも3月10日、否が応にもあの日のことを思い出してしまう。本稿では様々な思いが込められた『SID 15th Anniversary GRAND FINAL at 横浜アリーナ ~その未来へ~』の模様をレポートする。
開演時間を少し過ぎ、会場が暗転するとスクリーンに雨の中を飛ぶ飛空艇が映し出される。その飛空艇は15年の月日をタイムスリップするかのように巻戻る時計とともに時空を飛び越える。時計の針はシドの結成年である“2003”まで巻き戻ったのち、少し進み“2011”を指したところで止まり、歓声に包まれる中、メンバーが登場した。
記念すべき15周年グランドファイナルは「NO LDK」で幕を開ける。その意図はイントロが鳴った瞬間の歓声が表していただろう。何を隠そうこの曲は8年前に中止になった『dead stock TOUR 2011』のセットリストの1曲目に演奏していた曲なのだ。やはりシドにとってもこの公演はリベンジなのであるということを強く感じたオープニングだった。スクリーンに「SID 15TH ANNIVERSARY」の文字が映しだされて始まった「ANNIVERSARY」では〈出会ったんだ 魅かれたんだ それが奇跡 君にありがとう〉の歌詞を大合唱する場面も見られ、シドとファンが互いに思い合っていることを見せつけられる。その想いは「V.I.P」で客席まで伸びた通路に下りオーディエンスと一番近いところで歌うマオ(Vo)の姿からも感じ取ることが出来た。
MCでマオは「今日はその名の通りシドの15年をぎゅっと詰め込んだライブ、セットリストにしている」と話し、ライブはシドらしいエロティックで大人な詞世界が魅力なセクションへ。明希(Ba)のスラップが光る「cosmetic」、Shinji(Gt)の洒落たアレンジのギターとゆうや(Dr)のキメとタメの効いたドラムが心地いい「KILL TIME」ではジャジーに、続く「罠」ではブラスを交えた歌謡ロックを聴かせ、このセクションを締めくくった。
MCで明希は「今日は15周年の大打ち上げだと思う。そしてこれからを感じる最高のライブにしたいと思います」と語り、最近なにかとラーメンの話題が多いShinjiはバンドをラーメンに例え「昔は細くて長い麺が多かったけど、最近は太くて長い麺もたくさんあるからそんなバンドになりたいと思ってます」と笑いを誘った。また、ゆうやは「どれだけこの光景を見たかったか。あまり多くは語りませんが、8年越しですね」と感慨深そうに話していたのが印象的であった。
「僕らのデビュー曲です」とマオから「モノクロのキス」のタイトルがコールされると大きな歓声があがる。さらに「嘘」「ホソイコエ」と続いた流れではマオの伸びやかな歌声を十分に堪能することができた。また、「ホソイコエ」の冒頭ではスクリーンに雪が降る映像が映し出される。ここから続く「2℃目の彼女」までの冬にまつわる楽曲は、「スノウ」で雪解けを、「ハナビラ」で春を迎えた。この季節の移ろいを感じさせる切ないラブソングの数々もシドならではのセットリストだったように思う。
ライブは折り返し地点を過ぎ、スクリーンに「ARE YOU READY?」の文字が現れると明希の骨太なベースとゆうやのスピード感あるビートに乗せて、ラストスパートをかけるべくオーディエンスを煽り会場をあたためる。熱を上げた横浜アリーナに彼らがお見舞いしたのは「dummy」。これまでとは打って変わって楽器隊が花道に勢いよく飛び出したかと思えば、「横浜アリーナ! やれるか!!」と煽る明希や、再び通路まで下り客席に乗り出して歌うマオの姿にファンは熱狂。さらに高速シャッフルナンバー「隣人」、「結婚しよう!」と始まった「プロポーズ」、本編ラストを飾った「眩暈」と畳み掛け次第にオーディエンスのボルテージは上がっていった。