デビュー20周年の氷川きよしがチャート絶好調 “演歌の貴公子”の殻を破った壮大なポップスアルバムに

 デビュー20周年のベテランに今さら言うのも口幅ったいですが、氷川きよしの歌唱力、ハンパないですね。コブシを効かせた演歌のスタイルを離れてみれば、輝くのは言葉に対する気遣いと表現力の豊かさ。歌詞には女性目線と男性目線の曲がありますが、主人公がどちらなのかで喉の膨らませ方が変わり、歌い終え方までが絶妙に変化する。歌がうまいのは当然ながら、歌に自分の感情を乗せるためにどれだけ心血を注いでいるかがよくわかります。魂を刻む。そんな言葉を出すのも大袈裟ではないくらいに。

氷川きよし / Papillon(パピヨン)【公式】
氷川きよし / キニシナイ【公式】

 圧巻はラストを飾るQueenのカバー「ボヘミアン・ラプソディ」です。先ほどのインタビュー記事に話を戻すと、映画を見て「この孤独を僕は知っている」と感じた彼は「歌いたい、それも日本語で」と奮い立ったそう。長らく交流のあった湯川れい子が見事な訳詞を手掛け、フレディ・マーキュリーともアダム・ランバートとも違う、まさに氷川きよしだけの現代版「ボヘミアン・ラプソディ」が完成したのです。これはもう、聴け、感じろ、としか言いようがない。私は胸ぐらを掴まれた気分になり、ただ放心するのみでした。いや、すごいアルバムが出たものです。

氷川きよし / ボヘミアン・ラプソディ~「氷川きよし・スペシャルコンサート2019 きよしこの夜Vol.19」より【公式】

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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