『Mステ』から『エール』までーー“声のプロフェッショナル”たる声優らによるナレーションの魅力
現在放送中のNHK連続テレビ小説『エール』で、津田健次郎が語り(ナレーション)を務めている。声優がTVドラマのナレーションを担当するというのは比較的珍しいケースだ。しかも朝ドラは国民的なコンテンツということもあり、そこに彼の声が乗ることで、改めて“声のプロフェッショナル”たる声優の魅力に気づかされた向きもあるのではないだろうか。
そこで本稿では、数ある声優活動の中でも「ナレーションでの活躍」に焦点を絞り、その魅力に迫ってみたい。
声優の仕事はアニメだけではない
そもそも声優というと、「アニメに声を吹き込む人」という認識のされ方が一般的であると思われる。それも決して間違いではないが、それだけではあまりにも説明不足だ。お笑い芸人を「漫才やコントをする人」と定義してしまうと正確性を欠くのと同じように、声優の活動も非常に多岐にわたっている。
声優はアニメ以外にも、外国映画や海外ドラマの吹き替え、ドラマCDやオーディオブック、ゲームなどのキャラクターボイス、シンガー、ラジオパーソナリティ、そして前述のナレーションなど、多彩な仕事をこなす。注意したいのは、これらが本業に付随する副次的な位置づけではなく、すべて基本的な活動に含まれると言ってもいい点だ。
もちろん、その活動の割合は個人個人でまちまち。アニメ寄りの声優もいればナレーター寄りの声優もおり、シンガー寄りの人、ラジオ寄りの人、各種まんべんなくこなすオールラウンダーなど、さまざまに存在する。したがって、当然「アニメにはほとんど出ていない」という声優も存在しており、この事実はしばしば一般の視聴者を驚かせている。
前述の津田は比較的オールラウンダーに近いと言えるが、ナレーションのイメージはさほど強くないかもしれない。そういう意味では、朝ドラへの抜擢を予想外のことと感じた人もいるのではないか。しかし彼の出演したアニメ作品などを観てきたファンにとって、その適任ぶりはまったく予想外ではなかったはずだ。甘い低音ボイスと重厚な芝居を特徴とする彼らしく、さわやかな朝の一幕への効果的なスパイスとして見事に機能している。今後、津田に対して「ナレーションの人」というイメージを定着させる人が多数出てきたとしても、少しも不思議ではない。
ちなみに朝ドラで言えば、2015年の『まれ』で戸田恵子がナレーションを担当した例もある。もちろん戸田は女優としても著名であるため、純粋な声優としての起用とは言えないが、熟練の声技を大いに発揮してみせた。また、同じNHKの看板シリーズである大河ドラマにおいて、2015年の『花燃ゆ』で池田秀一がナレーションを務めたことも記憶に新しい。