EASTOKLAB、生活を切り取った『Fake Planets』で示す新たな可能性 変化を楽しむあくなき美への旅路

EASTOKLAB、あくなき美への旅路

EASTOKLABが描く“日常における美”

 EASTOKLABにとって、“美しさ”は切り離せないキーワードだ。 バンドアンサンブルとシンセサウンドのバランスの美しさももちろん魅力なのだが、 特に日置が歌と歌詞で描く、脆さと隣り合わせの美が、このバンドの大きなテーマとなっていると思う。 今回“生活”というテーマを通して、彼は日常にある美に着眼した。身近な情景を描く歌詞、それを紡ぐ日置の歌はあたたかく、ふわりとした風が耳を撫でるように、やさしく流れてゆく。過ぎゆく日々や人との関係、感情。消えてしまいそうなものほど美しいのは、この世に美を作り出した神による呪いのようなものかもしれない。

「聴いてくれる人にとって、どういう形であれ美しいものになれば…...と思っています。それは、単純に音楽的な刺激があるものでも、生活の一部になるようなBGM的なものであっても、棚の奥にしまって時々思い出すようなものでも何でもよくて、ただこの作品から美しさを感じてもらえたなら、それを大切にして欲しい」(日置)

 ただ、EASTOKLABが描く“美”には、消失するものへの憧憬だけではなく、“明日”というまだ見ぬ未来への希望の意も含まれている。

 M4「Hug」の〈ありふれた朝を待とう〉、M7「Ten」の〈今はどうかこの手を握って欲しい〉といった歌詞は、アンニュイな表現ながらも前向きな意思が感じられる。制作期間はまだコロナ禍に陥る前であったようだが、現在の環境下ともリンクするように思えた。聴く人の中には、厳しい現実から救われるような気持ちになる人もいるだろう。

「曲に込めた想いは自分自身のなかにあるものだけであって、聴いてくれる方の好きなように捉えてもらえたら良いと思ってます。だから、自分の中にある想いは曲が完成した時と一切変わりない。でも、今この状況下で自分達の音楽が誰かにとっての何かになるのであれば、それはとても嬉しいですし、自分にとっても特別なものになりますね」(日置)

 歌詞というものは、聴く人それぞれの生活によって見え方が異なる。作り手が意図するものと違う方向へ転ぶこともあるが、それもまた音楽の楽しみの1つであり、だからこそ生活に、人に寄り添える音楽となってゆく。

 このタイミングで“生活”と、変化を意味する“振り切る”というテーマを取り上げたのは、何かの縁なのかもしれない。今、人々の生活は大きく変わり、一部では日常生活や音楽活動も元通りには戻らないともいわれているなど、非常にタイムリーなキーワードだ。しかし日置は、決して前向きな姿勢を崩すことはない。

「好きなことを自分で意思決定して生活していきたいですし、心が動く瞬間を大切にして生活していきたい。それは今のような状況下でも変わりなく、生活自体に変化はあるけど、好きなものを好きでいられるうちは考え方自体には変化はありません」(日置)

 バンドが軸を持った今、考え方自体に変化がないのは他メンバーも同じ。あくまで自然に次の方向へ向かっていきたいというのが総意である。常に前進して行きたいという彼らの想いは、力強いメッセージとなり、今作に焼き付いている。

 今作をリリースする今も、すでに新しい楽曲の制作もスタートしているなど、彼らの探求心と向上心は落ち着くことはない。EASTOKLABは絶えずあるがまま変化し続け、己の美学を磨き続けてゆく。軸を示したのが前作であれば、スタンスと可能性を提示したのが今作である。そして、EASTOKLABのあくなき美への旅はまだまだ始まったばかり。これからが楽しみになる1枚だ。

■宮谷行美
ライター。音楽メディアにてライター/インタビュアーとしての経験を経た後、現在はフリーランスで執筆活動を行う。BELONG Media、HMV&BOOKS onlineへの寄稿や、Ringo Dathstarr、Swervedriverなどの国内盤解説を担当。
Twitter:@PIKUMIN_0502

■リリース情報
EASTOKLAB Digital Mini Album『Fake Planets』
6月3日(水)配信 DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT INC.
Digital:¥1,681(税込)
CD:¥2,200(税込)

-収録曲-
01. Contrail
02. Rainbow
03. Stud
04. Hug
05. Farewell
06. Living
07. Ten
08. Dive

ダウンロードはこちら

-CD取扱店舗-
diskunion
FILE-UNDER RECORDS
FLAKE RECORDS
4ROULEUR RECORDS
HMV record shop 新宿ALTA
HOLIDAY! RECORDS
indiesmusic.com
LIKE A FOOL RECORDS
Stiff Slack
The Domestic
タワーレコード名古屋パルコ店
アンダースコアレコーズ

■関連リンク
OFFICIAL WEB STORE
Official Site
Twitter
Instagram
Sound Cloud

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる