THE NOVEMBERS、激変する世界の様相を捉えた“新しい物語” 『At The Beginning』に描かれた未来への眼差し

「今この音楽が、この作品が聴かれることに意味があると、これほどまでに僕は思ったことがありません」
(小林祐介/THE NOVEMBERS)

 前作『ANGELS』から1年2カ月ぶり、THE NOVEMBERSによる通算8枚目のアルバム『At The Beginning』がリリースされた。

THE NOVEMBERS 8th Album「At The Beginning」Teaser Movie
THE NOVEMBERS『At The Beginning』

 もともと本作は、アルバムにも収録されている「消失点」をタイトルに掲げ、ツアーも同タイトルで行われる予定だったという(新型コロナウイルスの影響により延期が発表されている)。「消失点」とは、「遠近法において、実際は平行線になっている線が交わる地点」を本来は指すが、ここでは所謂「シンギュラリティ(技術的特異点)」がモチーフになっていると、小林祐介(Vo/Gt)は様々な場所で語っている。AI(人工知能)の能力が、人類を超える地点を意味するいわば「SF的」なその視点は、映画『ブレードランナー』や『AKIRA』の舞台でもあった2019年、THE NOVEMBERSが発表した『ANGELS』の中で、すでに大きな要素を占めていた。本作『At The Beginning』は、その路線をさらに推し進めたものであり、それこそ『AKIRA』に使われた楽曲「金田のテーマ」(芸能山城組)のカバーを披露した昨年11月のライブ『NEO TOKYO』を経て、そのビジョンはさらに明確になっている。冒頭を飾る「Rainbow」も、レコーディング初期の段階ではアルバムの最後に配置され、来るべき未来に対する「ポジティブな思い」を託したまま幕を閉じる構成のはずだったのだ。

THE NOVEMBERS「Rainbow」

「でも、今それをやることのリアルさや意味が、自分の中でどんどん希薄になっていって。『Rainbow』は始まりを予感させる曲として書かれたのですが、むしろ『すでに始まっていないと遅い』と思った。なので1曲目に持ってきて、『新しい物語が始まった』ということを示したかったのです」

 さる5月16日に行われた「CINRA.NET」主催によるオンラインイベント『CROSSING CARNIVAL’20 -online edition-』の中で、アルバムの曲順や、アルバムのコンセプトそのものにも途中で大きな変更が加えられたことについて、小林はこのように語っている。変更の理由は言うまでもなく、新型コロナウイルスによる小林自身のパラダイムシフトだ。例えば彼は、深夜ラジオ番組『RADIO DRAGON-NEXT-』に寄せたコメントの中では、次のようにも述べていた。

「コロナ禍で、世の中や自分自身が目まぐるしく変わっていく、あるいは今の社会やヒト本来の姿が剥き出しになっていく中で、『消失点』という仮のアルバムで描こうとしていたものは、自分の中ですっかり過去のものになってしまった。そこで、そのアルバムの次に起こそうとしていたアイデアや、アクションのイメージみたいなものが『啓示』のように未来からやって、現在の自分たちに同化した」

 冒頭で紹介した小林の言葉も、このラジオ番組の中で語られたものである。確かに本作『At The Beginning』を聴くと、例えば〈覚めるはずのなかった/夢から覚めていく〉(「Dead Heaven」)など、まるでこの事態を予見していたかのような言葉が並んでいることに気づく。中でもそれを強く感じるのが「消失点」で、小林自身も「世相によって最も意味が変わってきた曲」「今聴くと、一番しっくりくる」(『CROSSING CARNIVAL’20 -online edition-』)と認めている。〈昨日まではたぶん普通だった/さっきまでは割とまともだった〉と歌い始める「消失点」は、聴き進むにつれて〈世界が変わる〉〈その瞬間〉をビビッドに描き込んでいるが、さらにこの曲をアルバムの真ん中に配置することによって、シンギュラリティ“以前の世界”と“以後の世界”を明確に分けているのだ。

THE NOVEMBERS「Dead Heaven」
THE NOVEMBERS「消失点」

 「消失点」のサウンド面に耳を向けると、力強いシャッフルビートに乗せてシタールのようなフレーズや、ソリッドなギターバッキング、流麗なシンセサウンドなどが重なり合い、奥行きと広がりを持った立体的なサウンドスケープを構築している。どこか呪術的でトライバルな響きは、いうまでもなく「金田のテーマ」をカバーしたことによって、バンドにインストールされた新たな武器だ。さらに、2018年のEP『TODAY』あたりから導入したバイノーラルマイクによるものなのか、音の粒立ちが目に見えるようなサウンドプロダクションが、この曲のみならずアルバム全体に施されている。“音楽”というより“現象”が立ち現れているかのようなサウンドデザインは、岩田純也(トリプルタイムスタジオ)のレコーディングおよびミキシングと、中村宗一郎(ピースミュージック)のマスタリングによるところも大きいだろう。

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