小野島大の新譜キュレーション
Nathan Fake、Four Tet、Tornado Wallace、田中知之……小野島大が選ぶエレクトロニックな新譜11選
ドイツのプロデューサー、クリスチャン・レフラーの4作目『Lys』が自らの運営する<Ki Records>から。浮遊する淡く繊細な電子音、メランコリックで寂しげなメロディのディープ〜テック〜ミニマルハウスです。バルト海を望む北ドイツの自宅スタジオにて制作された今作は、窓から照らし込む自然光にインスパイアされた作品だそうで、アトモスフェリックなサウンドはインドア向け。四つ打ちのダンストラックから、女性ボーカルをフィーチャーしたセンチメンタルなエレクトロニックポップまで、インディロックファンにもおすすめです。
Khruangbinを輩出して注目を集めるUKの<Night Time Stories>から、ドイツのデュオ、Session Victimの4作目『Needledrop』。ジャズとR&BとディープハウスとトリップホップとAORとアンビエントがゆるやかに融合したようなダウンテンポエレクトロニカは、レトロなレイドバック感とコンテンポラリーなチルアウト感が微妙に混ざり合ったような音作りで、これまでのアルバムをはるかに凌ぐ抜群の洗練度。本作をきっかけに大きな注目を集めるんじゃないでしょうか。
アンドレアは、2012年ごろから活動するイタリアのプロデューサー。1stアルバム『Ritorno』(Ilian Tap)は、IDM/エレクトロニカとテクノとブレイクビーツとアンビエントをミックスしてベースミュージック以降の音響感覚で処理したようなミニマルテクノです。寡聞ながら本作で初めて知ったのですが、ミクスチュアのセンスとバランス感覚が抜群で、音の作り込みや音色の作り方も巧み。本作をきっかけに大きな注目を集めるかもしれません。
とびきりハードなやつを2枚。UKブリストルの地下テクノシーンの中堅マーティン・ハレの『Some People Never Learn』(Diffuse Reality)。ガツンガツンと真正面から豪速球を投げ込んでくるような、暴走する巨大トラックが警笛を鳴らしながら迫ってくるような、迫力満点の黒光りするハードコアミニマル。全14曲75分、一切の妥協のない、押しの一手の力相撲が実に痛快です。