ツユの楽曲が共感の連鎖を生む理由 アルバム『やっぱり雨は降るんだね』歌詞やメロディから考察

 さらに、ツユの楽曲が共感の連鎖を生んでいるのは、“比較”を表した歌詞に寂しさを増幅させるテクニックを用いているから。例えば、「やっぱり雨は降るんだね」は、サビ冒頭に相反を意味する〈だけど〉を盛り込み、続くネガティブワード〈やっぱり雨は降るんだね〉をたびたび繰り返すことで、今回も報われない、という失望感を一層強固にする。そして、クライマックスとなるアウトロで奏でられる滑らかなギターの音色、「ナミカレ」であれば、ピアノの音色が、溜まった寂しい感情を洗い流していくような役割を果たす。

 また、楽曲展開が前衛的なのも見逃せない。例えば、「風薫る空の下」は、冒頭〈初夏の日差しに縋っても〉から始まるストリングスの眩しいバラード風のAメロで、ぼかしや光彩の効果が被せられてから思い出へと帰っていくシーンを回想させ、ギターによるポップなメロディラインのBメロ〈熱されて溶けた道ばたのアイスだって〉で、足元を思い浮かばせ、4つ打ち→8ビート→2ビート→4つ打ちと刻むドラムパターンが強烈な〈せいぜい/手とか繋いではしゃいだって〉のサビで、最も自身に近い身体の一部をイメージさせる。このように、ブロックごとのサウンドの変化と脳裏に浮かぶ映像のズーム効果が、何度も上下を繰り返すジェットコースターに乗っているかのようなインパクトをもたらしている。

ツユ – 風薫る空の下 MV

 楽曲に詰め込まれたいくつものテクニックを超えて煌めくのは、言うまでもなく、ボーカル・礼衣の細かな感情の起伏を反映できる強度の高い歌声。おむたつの描く沈んだ表情を浮かべる少女のイラストとの相性が抜群で、ツユの世界観を揺るぎないものにしている。万華鏡のように様々な側面から劣等感を繊細に描き出していくツユ。第二章でも、予想だにしない楽曲群を送り出してくれることだろう。

■小町 碧音
1991年生まれ。歌い手、邦楽ロックを得意とする音楽メインのフリーライター。高校生の頃から気になったアーティストのライブにはよく足を運んでます。『Real Sound』『BASS ON TOP』『UtaTen』などに寄稿。
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