ハロプロ研修生ドキュメンタリー『ハロドリ。』好評の理由 番組が映し出す育成現場の実情
今月7日(6日深夜)、ハロー!プロジェクトのレギュラー30分番組『ハロドリ。』がテレビ東京ほかで放送開始した。この番組では、モーニング娘。'20などのハロプロ正規グループではなく、その下部組織でありデビューを目指している立場のハロプロ研修生にスポットを当てている。第1回目の放送後、ファンからは概ね好評の声が上がっているようだ。なぜ評判がいいのかを本記事で考察していく。
テレ東×ハロプロ深夜枠の歴史
テレビ東京とハロプロの関係は深い。基本的な話だが、モーニング娘。はテレビ東京のバラエティ番組『ASAYAN』の番組内企画から生まれたグループ。1998年のメジャーデビュー以降、モー娘。およびハロプロメンバーが出演するレギュラー番組は多数制作された。そのなかのひとつが「テレ東深夜枠」と呼ばれているものだ。
この「テレ東深夜枠」には、「30分番組」と「5分~10分帯番組」の2パターンがある。まず前者から見ていくと、最初期の番組は1998年4月~6月の火曜深夜に放送されていた『太陽娘と海』。これは当時5人組だったモーニング娘。や平家みちよ(現:みちよ)などが出演して演技を披露する、いわゆる深夜ドラマで、バラエティやドキュメンタリータッチの後続番組と比べると、やや異色の内容だった。
その半年後の1999年1月、やはり火曜深夜に放送開始したのが『アイドルをさがせ!』。モーニング娘。に限らず、カントリー娘。やメロン記念日などのハロプログループが出演するバラエティ番組だった。2002年3月まで続くが、ここで一旦流れが途切れる。
もうひとつのパターン「5分~10分帯番組」だが、その源流は2000年1月~9月放送の『モーニング娘。のへそ』。月曜から金曜の夕方17時55分から18時に放送されていた。当時は1999年9月発売のシングル『LOVEマシーン』がブレイクして(今の言葉で言うとバズって)、モーニング娘。が国民的アイドルと呼ばれるようになり始めた時期。ほぼ毎日、テレビにモー娘。やハロプロのアイドルが出ていた。
この後継番組である『少女日記』(2000年10月~2001年3月)から放送時間が深夜の月から金10分間(途中から7分間)に移行し、約半年ごとに番組タイトルと内容を変えつつ、ハロプロレギュラー番組として2009年3月までオンエアが続いた。番組タイトルを列記すると、『美少女教育』『新・美少女日記』『美少女教育II』『美少女日記III』『セクシー女塾』『それゆけ!ゴロッキーズ』『よろしく!センパイ』『二人ゴト』『魔女っ娘。梨華ちゃんのマジカル美勇伝』『娘。ドキュメント2005』『娘DOKYU!』『歌ドキッ!~ポップクラシックス~』『ベリキュー!』『よろセン!』がその系譜に当たる。
そして2009年4月からの新番組『美女放談』は木曜深夜の30分番組となり、放送パターンが『アイドルをさがせ!』の頃に戻った。以降、『美女学』『ハロプロ!TIME』『ハロー!SATOYAMAライフ』『The Girls Live』と続き、2019年4月~2020年3月放送の『AI・DOLプロジェクト』を経て、今回のお題の『ハロドリ。』となる。
(なお、イレギュラーなケースとして、2002年4月から2004年3月の期間に平日夕方5分のミニ番組枠が『ハローキッズ』として一時的に復活している)
歴代の番組においては、ハロプロメンバーがドラマ演技に挑戦する『少女日記』『新・美少女日記』『美少女日記III』や、スタジオ企画中心の『それゆけ!ゴロッキーズ』、スタジオライブ番組寄りの『歌ドキッ!~ポップクラシックス~』『The Girls Live』、教養番組寄りの『美女放談』『AI・DOLプロジェクト』など、内容に変化があった。
舞台裏ドキュメント
ハロプロファンのニーズが高い内容として「舞台裏ドキュメント」がある。ライブ前のレッスンや、本番当日の緊張した様子などにカメラが潜入するという企画だ。そもそも『ASAYAN』も、普通の女の子たちがモーニング娘。というアイドルに成長していく過程をドキュメンタリー形式で毎週オンエアしたことで人気になったもので、いってみればハロプロの伝統路線だろう。これまでの歴代番組では、各番組ごとにメインの企画があり、その他のサブコーナーとして舞台裏ドキュメントが放送されていたケースが多い。
また、番組タイトルをよく見てみると示されているだが、それぞれでフィーチャーされるグループが異なっている。『それゆけ!ゴロッキーズ』の「ゴロッキーズ」というのはモーニング娘。の第5期と第6期メンバーのことを指しており、そのメンバーの出演頻度が高かった。『ベリキュー!』はBerryz工房と℃-uteの略称であり、その2グループのレギュラー番組だった。30分間に変更以降は、『ハロプロ!TIME』を筆頭に、ハロプロメンバーがまんべんなく出るようになった。
つまり、今回の『ハロドリ。』は、舞台裏ドキュメントを主軸に据えて、なおかつハロプロ研修生をフィーチャーしているというところに特徴がある。ちなみに番組タイトルの『ハロドリ。』とは「Hello!Project×Dream」という意味合いで、ハロプロ正規メンバーとしてデビューするという夢を目指す研修生たちを象徴するものとなっている。
現在のハロプロは、オーディション合格者によって加入したメンバーも数名いるのだが、ハロプロ研修生としてレッスンを重ねたのちに正規メンバーに昇格するというケースがほとんどだ。少し前のハロプロファン内の雰囲気として、研修生を追うのはマニアックな趣味だという見方も一部あったが、現在の状況では、研修生時代からチェックするのがごく自然なものになってきている。『ハロドリ。』で研修生をメインで取り上げるという企画が成立したのも、そんな時代の移り変わりがあってのものだろう。
また、ハロプロのレギュラー番組がテレビ内のみならずYouTubeなどのネット上でも展開されるようになったのは、『ハロ!ステ』が始まった2013年以降のこと。『ハロ!ステ』や『GREEN ROOM』などで公開されていた、舞台裏ドキュメントというどちらかといえばファン向けのコンテンツが、深夜とはいえ地上波テレビ番組でメインとしてオンエアされるようになったのも、やはり時代の変化の賜物だろう。