三浦大知、10年代ダンスミュージックとしての楽曲の魅力とは DJ視点で聴かせる『NON STOP DJ MIX』を分析
そういった流れの中で本作はフィナーレに向かって加速していくのだが、注目したいのは、大団円を迎える前に三浦にとって「実験的」な作品となった『球体』収録の「綴化」が選曲されている点だ。実験的という意味でいえば、同曲ではトラップ由来の3連譜を取り入れた三浦のボーカルが目立つが、個人的には曲後半のOneohtrix Point Neverを彷彿させるエレクトロニクスサウンドにこそ実験性を感じる。そのためこのタイミングでの同曲の選曲はDJ DAISHIZENのセンスが光る通好みのものであり、本作における絶妙なスパイスになっている。
三浦大知は以前、「自分には「歌って踊る」スタイルがあって、それがあればどんな曲でも自分らしいダンスミュージックになる」(参照:CINRA)と語っていたが、このようにしてDJ視点から本作を振り返っていくとテン年代に発表された三浦大知作品がいかにダンスフロアで機能する“ダンスミュージック”であったかがよくわかる。
またDJ視点でいえば、本作では例えば「Darkroom」と「Breathless」、「DIVE!」と「全速力」のようにサウンド面だけでなく、曲のタイトルも言葉遊び的にイメージの面で“繋がれていく”かのように選曲されていることは興味深い。これは選曲にメッセージ性を持たせる“テープ作り”の美学にも通じる部分であり、そこからは数多の三浦大知楽曲の中からそういった曲を選び抜くDJ DAISHIZENの非凡な選曲センスが感じとれる。こういった要素が読み取れること“DJミックス作品”である本作の魅力のひとつといえるだろう。
■Jun Fukunaga
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター。DJと音楽制作も少々。
Twitter:@LadyCitizen69