三浦大知「COLORLESS」は何が凄いのか “無色透明”であることを強く肯定する頼もしさ

 12月4日と11日の2夜に渡って放送された『2019 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)。年末の風物詩として人気を博す同番組の第1夜終盤、登場した三浦大知のステージがあまりにパワフルで思わず息を呑んだ。ダンサーとの一糸乱れぬモーションに、水を得た魚のように溌剌と猛威を振るうボーカル。それらが絶妙な呼応によって緊張感を生み出し、3分足らずのショーを究極なまでにクールな時間へと押し上げていた。案の定、直後のSNSには大知のパフォーマンスを絶賛する声が続出。だが筆者が思うに、多くの視聴者が衝撃に震えたのは、肝心の歌唱曲が得体の知れない強烈さを放っていたからに他ならない。テレビ初披露となった最新曲、名前は「COLORLESS」。国民的音楽番組にはおよそミスマッチな先鋭すぎるクオリティは、あの日、三浦大知の一挙手一投足をも間違いなく支配していた。

三浦大知「COLORLESS」

 2020年半ばまで続く長規模ツアー『DAICHI MIURA LIVE TOUR 2019-2020 COLORLESS』のタイトルに堂々起用され、その初日からファンの前で披露されてきた「COLORLESS」。12月4日に待望の配信リリースを迎えたばかりだが、三浦大知の新たなマイルストーンになりそうな風格が早くも漂っている。トロピカルハウスからの影響が見て取れるリバーブの効いたシンセで、同曲はスタート。もっとも、トロピカルハウス特有の透明感や能天気な要素はゼロに等しく、妙に閉塞感を帯びた幕開け。それもそのはず。Aメロに入るやいなや、静かなる低音ボイスが張り詰めた空気を一気に呼び寄せ、我々はこの楽曲が、いかにシリアスな志向であるかをつくづく思い知るのだ。

 続くBメロでは、歌唱のタッチが力強さ重視へと劇的にシフトし、押韻旺盛な歌詞を一段とグルーヴィーに盛り上げていく。『FNS歌謡祭』のステージでも感じたことだが、このパートでの開放感抜群の歌いっぷりがとにかく素晴らしい。過剰なまでのエコーが施されたボーカルしかり、渾身とも言える叫びの表現がみずみずしく強調されている。

 その勢いを提げたまま、ついに訪れるサビ。「COLORLESS」はここに来て、3連のリズムを多用した怒涛の変革タイムへと突入する。風を切るジェット機のごとくファルセットが俊敏にテンポを刻み、かと思えば〈I am colorless〉と訴える鋭いボーカルが軽妙にスイッチング。まるで左右に頭を振られているかのようなサイケデリックこの上ない感覚が、他のダンストラックにはない深い快感をもたらしてくれる。おそらく初めてこの楽曲を耳にしたリスナーが、もっとも刺激的に感じるポイントでもあるだろう。2コーラス目のサビに至っては、大知によるフェイクが縦横無尽に炸裂することで、スピード感、スリルともに最高品質のレベルに達している。

三浦大知「COLORLESS」

 勘のいい人ならすでにお気付きだろうが、今回「COLORLESS」のサウンドプロデュースを手がけているのは、BTS、DEAN FUJIOKA、三代目 J SOUL BROTHERSの登坂広臣といったトップアーティストを手がけるUTAその人である。カッティングエッジなサウンドと無音ダンスで話題をさらった「Cry & Fight」や、同じメロディのバラード(シングル両A面曲の「片隅」)が存在しているとは思えないほど手の込んだ意匠を発揮するハウスチューン「Corner」など、大知のエクスペリメンタルな領域を拡張し続けてきた彼だけに、「COLORLESS」での想像を超えるコンビネーションはもはや必然。全編Nao’ymtプロデュースによる傑作『球体』にも通じる高い独創性を見い出すことが出来たのは、個人的にとても大きな収穫だった。

三浦大知『球体』

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