三浦大知、10年代ダンスミュージックとしての楽曲の魅力とは DJ視点で聴かせる『NON STOP DJ MIX』を分析
“2010年代の三浦大知の総括”というテーマの下、制作されたDJミックス企画盤『DJ DAISHIZEN Presents 三浦大知 NON STOP DJ MIX Vol.2』が3月18日にリリースされた。
本作は三浦大知のライブをDJとしてバックアップするほか、ライブのマニピュレーターも務めるDJ DAISHIZENによるDJミックス企画の第2弾だ。このDJミックスには、フューチャーベース、ダブステップ、EDM、トラップなどテン年代にダンス/クラブミュージックのトレンドとしてだけでなく、近年のポップスヒットにも影響を及ぼしたジャンルが幅広く取り入れられており、先述の“2010年代の三浦大知の総括”の言葉どおり、ここ10年のダンスミュージックのトレンドともシンクロしながら三浦大知がテン年代を駆け抜けたことを感じ取れる作品になっている。ダンスミュージック視点で解釈した“2010年代の三浦大知ベスト盤”といっても過言では内容だ。
音楽映画のクラシック『ハイ・フィデリティ』で「聴き手のテンションをアゲないといけないが、アゲすぎてもいけない」と主人公が語るように“テープ作り”の最初の1曲目の選曲は非常に重要だが、その基準にあわせて考えると、本作の冒頭を飾る「EXCITE」はまさに100点の選曲だろう。
国内クラブシーンの若き旗手の1人、Carpainterが制作に参加した同曲は、本作では1分ほどプレイされるのだが、その後半はフックのパートに焦点を定め、疾走するビートを含めて聴き手の耳を捉えるのに効果的な聴かせ方になっている。そのためこれをきっかけに三浦大知の楽曲に耳を傾けようという気持ちが再生前に増して膨らむのだ。
そういったリスナーの関心を引き寄せる“掴み”は実にDJ的であり、続く「Baby Just Time」から「Black Hole」までのフューチャーベース、ダブステップ系楽曲で構成されるブロックにグッと引き込む流れを作り出す。そのテンションを保ちつつ、プレイされるのはノンビートの「all converge on “the one”」なのだが、この曲はちょっとした箸休めというよりは一旦落ち着かせることで、次の展開のワクワク感を煽る、ドロップ前の最初のブレイク的な役割を果たしている。
そして「MAKE US DO」までのゆるやかなテンポで聴かせるバラード系ブロックを通過し、ジャジーな「comrade feat. 三浦大知」、「普通の今夜のことを」を中心にブラックミュージック色が強い楽曲で構成される中盤が展開されるがこのブロックのハイライトはアンセミックな'90sポップ風の「Neon Dive」からプリンスを思わせる'80s風ファンク「DIVE!」へとつながる流れだ。このブロックではオーセンティックなダンスポップスを歌いこなす三浦大知のシンガーとしての魅力を大いに感じられるパートになっている。
続いてSeihoが制作に参加し、“国産ダンスミュージック”と称された「Cry & Fight」から始まる後半ではMIYAVIとの「Dancing With My Fingers」、疾走するブレイクビーツが印象的な「(RE)PLAY」、EDM系の「Corner」、「誰もがダンサー」などダンサブルな曲が多いのが特徴で、ピークタイム仕様の“エネルギッシュに踊れる三浦大知”楽曲を軸に選曲し、DJプレイ的にはいわゆる“アゲ”なムード作りが行われている印象を受ける。